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2016年10月2日 24/14℃ 晴れ

 


雲隠り鳴くなる雁の行きて居む秋田の穂立繁くし思ほゆ

誰が謳ったものやらさっぱり分かりませんが、雁を謳った万葉集を見てみると季節の移ろいを感じさせるものが多くあります。

日に日に秋も深まり標高の高いところでは紅葉の見頃を迎えているようです。
気温もたいぶ下がってきたことから蚊の動きが鈍ったところを狙って山での観察です。

今回は知人よりお誘いを頂きガイドしてもらう形での入山。

観察にあたっての注意事項であったり生態について色々とレクチャーを受けながら観察ポイントに到着すると出会いは呆気なく訪れました。


初めて見る野生のツキノワグマ。

 

 

以前より野生のクマが見たいと思い、観察に出歩く際は敢えてクマが出没しそうなルートを回っていたのですが未だ遭遇できずにいました。

 


念願叶って初めて見る野生のクマ。
いきなり2頭とは・・・。
こうもあっさり見れるものなのかと思ったのと同時に想像していたサイズより大きいという印象を受けました。

 


時間を置いて現れた更に大きな個体。

こちらはこの辺の主で先に見た2頭と同じくバッタを食べる為に長時間ウロウロしていました。

 

( 拡大画像 )

安全を考慮してだいぶ離れた林道から見ていましたが突然クマが走り出す様子を目撃。

ちょうどそちらへ風景写真を撮りに来たという方が向かったので警戒して逃げたようでした。
噂でクマは臆病だと聞いていましたが、噂以上に警戒する様子と足の速さに驚かされました。



さてこのツキノワグマに関してですが、秋田県では今年の春にクマに襲われ5人の死傷者が出てしまい連日のように全国版のニュースになりました。

襲われたのはいずれも山菜を採るため山に入ったところでクマと遭遇したようです。

これを受けて入山を規制して自治体や警察で入山しないよう呼び掛けたりパトロールに回るなどの対策がとられました。

被害の拡大から報道が過熱し『人喰いグマ』なんて言葉も見られましたがこれってどうなんでしょう?

 


これは私個人の考えですがクマだけを一方的に悪者扱いするのはおかしな話だと思います。

先ず、入山を規制してもそれを無視して山菜を採りに来る人が後を絶ちませんでした。

そして『人喰いグマ』と言われましたが人間はクマを食べるのでクマからしたら『クマ喰い人』と云えるでしょう。


全て人間目線の結果だと思います。

例えて話すなら、自分の家で何か不審な物音がして恐る恐る音のする方を見てみるとリュックを背負った不審者が台所や冷蔵庫を漁っていたらどうするでしょう。
しかも手には刃物のような物をを持っていたら。


人によって其々対応は違うと思いますが私なら背後から形振り構わずぶん殴ります。
専守防衛なんて云ってられません。


それが我が身を守る為だとすればクマも同じこと。

山がクマの家だとすると勝手に入って来た人間に遭遇したらクマだって恐いんだと思います。


そういった意味でクマの棲む山に入るのは自己責任。
山菜を採るのもそうですし、こうして観察をすることも何かあった時は全て自分の責任です。


こんなことを思いながらクマを見ていましたが、知人の話によると「今観察しているこの林道をクマが横切るよ」と云うのです。

通過するポイントを聞くと私の立ち位置から100mちょっと先のカーブのところを通るというので、本当に現れるのだろうかと思いながらもそちらを注視していると本当に現れました。

 

 

ゆっくりと現れたクマはこちらを見るような素振りを見せて道路を横断。
反対側の林へ入り姿が見えなくなりました。

遠巻きに見るクマに比べて小さい印象を受けたので知人に尋ねるとまだ若い個体だそうです。

そしてクマはそれほど視力が良い生き物ではなく、静かにしているとこちらに気付かないとのこと。


一番敏感なのは匂いで次に音。
音についてのお話でビックリしたのがラジオの音は危険ということ。

クマ避けの為に鈴を鳴らしたりラジオから音を出しながら歩くと良いという話をよく耳にしていましたが、ラジオの音のする場所には食べ物が有ると学習しているクマもいるそうです。


興味深く話を聞きながら観察を続けると直ぐそばからガサガサという物音・・・


近い!

 

辺りに緊張感が漂い静観していると・・・

 

 


出た!!!

 

 

今日の最短距離で観察したこのクマは一度道路を横断した若いクマ。

 


距離が近くこちらの存在に気付いたクマは駆け足で笹藪の中へ消えていきました。

 

 

本当に臆病な生き物。

クマに限らず色んな野生の生き物たちと上手に暮らしていけたらいいなと思った一日でした。

おしまい。