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2019年11月2日 17/9℃ 晴れ時々曇り




待ちに待ったこの週末。

秋田県内で野鳥観察するにあたり、秋の渡りでは最も珍鳥の出現率が高くなる時期となりました。

 


今回も例によって男鹿半島へ繰り出す予定でしたが、1日の正午過ぎた頃に鳥友さんよりオジロビタキ発見の一報が。

渡り鳥の観察でメッカとなっている山形県の飛島では、この時期の観察種で常連とも言えるような鳥ということもあり、位置関係から見ても秋田県内を相当数が通過しているはず。

 

しかし毎年のように方々探すものの姿を見ることが出来ないまま数年が経過し「 いつになったら観察できるのだろう 」と思っていたところ、このタイミングで観察のチャンスが巡ってきました。

 


抜けていないことを祈り早朝から現地へ行ってみると、情報元の鳥友さんといつものバーダー氏が既に捜索中。

状況を伺うと姿が確認できないということで、手分けをして探し始めて間もなく『 ビリリリッ 』というオジロビタキの鳴き声が聞こえてきました。

鳴き声を頼りに探してみると高い場所に止まるオジロビタキを発見

 

 

しかしこれが恐ろしいほど手強く証拠写真を撮れたらマシと思える程で、1秒たりとも同じ場所に止まりません。
過去に観察した印象では警戒心は皆無で居たら“撮影会”になると思っていただけに想定外の展開でした。

見失わないよう行動を注視していると、追いかけ合うようにして別個体のオジロビタキが登場。

これまた驚きの展開、なんとこの場所にオジロビタキが3羽いるようです。
複数いることで落ち着かないのか撮影という部分に関しては全て証拠写真。

強いて云えばタチの悪いコサメビタキを見ているような感覚です。

 

 

あまりの手強さにバーダー氏は他の鳥を観察に行ってしまう程で、仕事があった鳥友さんも居なくなり、現地に残ったのは私一人。

オジロビタキは周囲を大きく周回しているようで、一時姿が見られなくなりましたが私はその後も執念で探鳥を続けました。

暫く探していると鳴き声を確認することができ、相変わらず高い場所を移動しているオジロビタキを確認。
すると急に低い横枝に降りてきてのんびりと止まっています。

 

 

まるで人(鳥)が変わったような行動にビックリ。

その後も高い場所に移動することはあったものの、確認当初に比べるとかなり観察しやすい状況になりました。

 

 

状況が好転したことで一報を入れると間もなくバーダー氏も現地に戻り、仕事に行ったはずの鳥友さんが『 お腹が痛くなってしまって・・・ 』と現地に戻り、再び3人で観察会。

珍鳥が出るとお腹イタイイタイ病。
これは私もよく発症しますが、一度感染すると根治は難しいようです。

 

 

ここでざっくりとオジロビタキについて手持ちの図鑑を参考に説明

体長は12cmでコサメビタキよりも1cm小さなサイズ。
日本には数少ない旅鳥または冬鳥として渡来し、平地から山地の林、公園などに生息するようです。

尾を頻繁に上下に動かしますが、この尾羽がプリッと上を向いた姿はオジロビタキの特徴的スタイル。

 

 

他のヒタキ類に比べると丸っこい体型をしているので、とても可愛い印象を受けます。

比較的近くで観察できるようになったことで、こちらのオジロビタキは亜種のニシオジロビタキであることが判明。

下嘴の色、腹の白色部との境界帯、三列風切羽先の色、上尾筒の色など様々な識別点がありますが、野外で観察するにあたり下嘴の色に着目するのが一番手っ取り早いかもしれません。

オジロビタキの下嘴は黒色なので、パッと見た目に真っ黒に見えますがニシオジロビタキの下嘴は肉色なのでヒタキというよりもムシクイのような色合いに見えます。

以前観察したオジロビタキの画像と比較してみます。

 

【 ニシオジロビタキ 】

【 オジロビタキ 】


 

ちょっと分かりにくいかもしれないので、今回観察した個体の下嘴に焦点を当てて撮影した画像を拡大。

 

ニシオジロビタキはオジロビタキのように下嘴の色は肉色であることが分かります。

但し肉色という表現は手持ちの図鑑に倣ったもので私の見た目には橙黄色といった印象。

 

 

その他に上尾筒に焦点を当てた画像も掲載しましたが、過去に観察したオジロビタキの画像を漁ってみたものの、このように撮影した画像はありませんでした。

オジロビタキを観察した当時は「 可愛い 」「 見ることが出来て嬉しい 」といった気持ちでしか見ていませんでしたし、その時はニシオジロビタキという存在も知らなかったので識別しようとも考えなかった時代。

 

その為オジロビタキの画像は向きが異なります。

上尾筒の部分には分かり易いよう赤い矢印を付けました。

 

ニシオジロビタキの上尾筒は淡色ですがオジロビタキの上尾筒は黒色をしていることが分かります。

 

【 ニシオジロビタキ 】

【 オジロビタキ 】


 

オジロビタキをを観察してから数年経過して知識は増えていたものの、なかなか観察のチャンスに恵まれずようやく今回こうして観察することができました。

色々調べるなかで分かっていたのは、日本に渡来するオジロビタキは実際のところニシオジロビタキの方が多いという説もあるようです。

 

 

勿論、地域性もあるかもしれませんが今後地元で観察例を増やすことができればまた違った何かが見えてくるのかもしれません。

さて今回じっくりと観察したことで見た目だけではなく鳴き声についてもちょっとした違和感を感じました。

 

 

たまたまかもしれませんが今回観察した個体はジョウビタキに似た『ヒッヒッ』という声を出すことがありましたが、過去に観察したオジロビタキはそのような声を発していた記憶がありません。

そしてオジロビタキ特有の連続的な鳴き声ですが、電子的で力強く聞こえるオジロビタキに対してニシオジロビタキの鳴き声は声の質が細く感じました。

録音している訳でもなく、あくまでも個人的な印象を元にした話なのであまり参考にならないかもしれませんが、もし両者の鳴き声を比べて聞くことができれば違いが分かると思います。


難しい話はここまでにして人工物に止まる姿ですが個人的にお気に入りの写真を。

 

 

フェンスの網目や有刺鉄線に止まることも多く、ここから餌を探しているようでした。

虫を見つけると一瞬地面に降り、捕まえると直ぐに飛び立ってしまいます。

 

 

飛んでる虫を捕る際にはホバリングすることもあり、フライングキャッチも見せるなど飛翔能力は高い印象を受けました。

何を食べているのか気になり、地面で虫を捕獲した際の画像を拡大

この時の獲物は甲虫類の幼虫だったようです。

 

 

獲物をぶんぶん振り回し枝に叩きつけていました。

 

 

可愛い顔をしていますが獲物は丸呑み。

 

 

観察を続けることである程度の行動パターンは掴めたものの、翻弄されることが多く気付いてみると観察を始めて9時間が経過。

ネットでよく見るような“撮影会”というような雰囲気にはなりませんでしたが、オジロビタキとの違いをしっかりと観察することができ情報を寄せてくれた鳥友さんには本当に感謝です。

 

 

今回観察できたニシオジロビタキ、現在は亜種として扱われていますが今後別種として扱われる可能性が高いようなので観察の機会に恵まれた時は両者の違いをしっかりと比べてみるのもよいかもしれません。

 

今後この個体が移動するのか越冬するのか分かりませんが、また機会を見て観察できればと思います。


本日の観察日記はこれにておしまい。