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2019年9月15・16日

 

 



前回の続き。

佐賀県の東よか干潟(大授搦)でシギチの観察を終え、県境を跨いで長崎県佐世保市に移動。

この旅のお目当てとしていた佐世保市でのタカの渡りが不調という噂を耳にし、当初の予定を変更して二日連続でシギチの観察をすることにしました。

そうは言ってもやはり諦めてきれない部分があり、念の為に当日のタカの渡り速報を見てみると・・・


『うぉぉぉぉぉ!!!』


飛んだ、飛んでる!

野鳥の会 長崎県支部の発表によるとお目当てのタカが6419羽がカウントされたとの情報が更新されていました。
天候不順が続いていたことで足止めを食らっていた群れが一気に渡ってきたようです。

この発表を受け当初の予定通り15日はタカの渡りの観察をすることに決め、翌日も沢山のタカが渡ることを祈ってこの日は早めに就寝。


ここからは長崎県佐世保市で観察したタカの渡りの様子を綴りたいと思います。

 

2019年 野鳥観察の旅 in 長崎県

 

 

15日朝、起床して直ぐ外の様子を見てみると朝焼けが綺麗な良いお天気。
風もそれほど強くなくタカの渡りには影響が無さそうです。

今回タカの渡りを観察した場所は佐世保市の市街地から車で約30分ほどの烏帽子岳。

タカの渡りの観察としては有名な場所で、この時期は佐賀県の東よか干潟とセットで観察される方が多いようです。

東よか干潟から烏帽子岳は高速道路を利用して約1時間半の距離。

 

 

アクセスの良さからも定番コースとなっていることが頷けます。

市街地を抜け烏帽子岳に向かっていると道路標識には今回お目当てとしているタカの絵が描かれていました。

お目当てのタカとは秋田で見ることのできないアカハラダカ。

 

 

このように道路標識に描かれているくらいなので、地元では広く周知されていることが伺えます。

迷うこともなく午前7時ちょうど、烏帽子岳の観察場所に到着。
既に数名のバードウォッチャーが渡りに備えてスタンバイしていました。

 

 

東やにはネットでよく見る横断幕。

ここで観察をした県外のバードウォッチャーは必ずといっていい程このアングルで撮影した画像をブログに掲載しています。

 

 

私が到着してからも続々と人が押し寄せ、こんなにも人が密集している状態で野鳥を観察するのは初めて。

何か落ち着かないところもありましたが、アカハラダカの渡りがいつ始まるのかとドキドキしながら待っていると割りと近い距離をハトが通過。

 


・・・と思ったらハトじゃない。

突然訪れたアカハラダカとのファーストコンタクト。

 

 

完全に油断していたのでピンボケですが初見・初撮りの画像です。

この時の時刻は7時29分。
朝の早い時間帯は前日の夕方に烏帽子岳へ到達した個体が観察場所の近くを飛ぶようで、撮影に重きを置いてる方は朝イチだけ撮影して帰るのだとか。

そして3分後、観察場所から真っ正面の開けた位置にタカ柱ができていました。

 

 

画像に写る黒い点々は全てアカハラダカ。
数えてみるとちょうど50羽の群れ。

秋田で50羽のタカ柱が見られることはなかなかありません。
私の記憶では一番多い時でも30羽弱だったと思います。


ファーストコンタクトは不意打ちのような形だったので、アカハラダカの群れが烏帽子岳の上空を舞うのはいつかと心待ちにしていると8時ジャストにその時が訪れました。

烏帽子岳の稜線に見え隠れするアカハラダカの群れ。

 

 

上昇気流に乗って円を描きながら徐々にこちら側へ・・・

空一面がアカハラダカに覆われ乱舞する瞬間です。

 

 

「すげぇ・・・」

 


初めて見る光景に鳥肌が立ちました。

この状況をどのように記録したらいいのか試行錯誤しながら撮影を続けましたが、やはり手っ取り早いのは動画だと思いピントはさておき手持ちで撮影。

雰囲気だけは伝わると思います。

 

 

こうした群れが次々と押し寄せ興奮の時間が続きました。

アカハラダカは烏帽子岳に発生する上空気流に乗り高度を稼ぐと滑空の状態で南の方角へ流れていきます。

 

 

渡りの一部始終を見たところでようやく落ち着きを取り戻しました
正直なところ最初の群れを見た時は興奮状態にあり、自分がどのように行動していたのかあまり覚えていません。

落ち着きを取り戻しところで低い位置を飛ぶ個体に狙いを定めて撮影。

 

 

大きさがハトよりも少し小さい30cmということもあり、かなり近くを飛んでくれなければ鮮明な画像を残すことは難しいものがあります。

10時頃になってTwitterを開いてみたところ、対馬では既に1万羽を超すアカハラダカが渡ったという情報を目にしました。

アカハラダカは朝鮮半島や中国で繁殖し東南アジアで越冬するので日本においては旅鳥の扱い。
秋の渡りの時期には対馬を経由した群れが烏帽子岳など九州を通過するルートで南下していくことから、遠く離れた秋田では過去にアカハラダカの観察例はありません。

そしてこの烏帽子岳、北から南に向かうアカハラダカの渡りのルートになっているだけではなく、本州を東から西に渡って行くハチクマのルートとも重なるためタカの渡りの交差点とも呼ばれているようです。

 


正に交差点で交わるハチクマとアカハラダカ。

 

 

アカハラダカを見たい一心で辿り着いた烏帽子岳、前日は東よか干潟で卒倒しそうな状況を耳にしましたが蓋を開けてみれば絶好の観察日和となり何も言うことなし。

地元の方もここ数年で一番良いという話をしていたので、色んな意味で運に恵まれました。

気付いてみると駐車場は満車で大賑わい。

 

 

しばらく観察を続けていてふと思ったのが、烏帽子岳に発生する上空気流を捉えた群れを山頂から見るとどうなるか。

駐車場の脇には登山道があり、ゆっくり歩いても10分もかからず山頂に着けるようです。

烏帽子岳は私にとってはおいそれと来れる場所ではありません。
やり残しが無いよう、物は試しにと山頂に上がってみると佐世保市の市街地を見下ろせるパノラマが広がっていました。

 

 

そして思った通りアカハラダカとの距離がかなり近い。

この時は対馬を経由してきた群れが到達する頃だったので、朝イチに上がった群れに比べるとやや高度が高めでしたが、それにしても近く感じます。

 

 

兎に角大きく撮りたいという方は朝イチに山頂へ登り、塒立ちをした個体を狙うのがベストでしょう。

私の機材でもまぁまぁな写真が撮れたことを考えると、APS-Cに600mmだと全身が収まらずはみ出るくらいかもしれません。

 

 

また山頂では距離が近いことを活かして雌雄のみならず幼鳥の違いもはっきりと見ることができると思います。

野鳥の会 長崎県支部の方の話では下は全体を見渡しカウントする場所であり、ロケーションからも撮影は山頂だと仰っていました。

 

 

但しその日の天候などでアカハラダカの高度や通過するポイントが異なるようなので、こればかりは運要素が強いようです。

結果としてこの日にカウントされたアカハラダカの数は6933羽

しかし翌日の16日になってみると天候は良かったものの強風が影響したようでカウントされた数は298羽と前日と大幅に異なりました。

 

 

振り返ってみると心配していた台風にも当たらず快晴のお天気にも恵まれ、地元の方が仰っていた『今日が最高』という言葉も聞くことができ、最高の観察をすることができたと思います。

素晴らしい光景を見せてくれた烏帽子岳ですが、この場所にも風力発電の計画があるようでした。

 

 

こんな話題で楽しい旅行記を締め括りたくはありませんが、エコビジネスの話は他人事ではありません。

何年後になるか分かりませんがいつかまたアカハラダカの渡りを見に来た時に、この風景が変わっていないことを祈っています。
地元の方の思いが国や企業に伝わりますように・・・


ちょっと暗い話題になってしまいましたが、佐賀県と長崎県を股に掛けた観察旅行は本当に楽しいものでした。

いつか機会があればまたこの地に足を運んでみたいと思います。

 

 

最後の画像は佐世保バーガーの一覧表。
高速道路の降り口を間違え同じ区間を行ったり来たりすると料金所のオバチャンが手渡してくれました。

オバチャン、ありがとう。

こんなに沢山の種類があると思わなかったよ。

 

 

2019年 野鳥観察の旅 in 佐賀県&長崎県はこれにておしまいです。