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2020年11月8日




今回の日記は1日(日曜日)の観察分から。

この時期恒例になっている男鹿半島での探鳥ですが、先週の日曜日はかなり渋い結果に終わってしまいました。

お目当ての鳥を探してあちこち歩き回りましたが、鳴かず飛ばずの時間が続き心が折れかけた頃、漸くムジセッカの地鳴きを確認。
藪の中から出てくることを期待して静かに待機してみると、明らかにウグイスよりも小さなサイズの鳥が飛び出てきました。

藪の中を動き回るムジセッカを「証拠写真でも良いから」と何とか撮影。

 

 

何とビックリ、撮影できたのはムジセッカではなく夏鳥のヤブサメ

鳴き声の主は未だ藪の中。
それにしてもまだヤブサメが渡らずに居たとは・・・

 


今までこの時期はホオジロ科の鳥ばかり見ていたこともあり、他の科の鳥に関して全くと言っていい程データを持ち合わせておりません。
私の眼に映らないだけで、夏鳥として見られる種の渡りは未だ続いていたようです。

ヤブサメには意表を突かれましたが、ムジセッカの登場を待ってその後も待機してみたものの眼に映る鳥はウグイスばかり。

 

 

完全に心が折れてしまいました。

気持ちを切り替える意味で岩場を歩いて探鳥を行っていると、目に飛び込んできたのはハヤブサの姿。

狩りをして間もなくだったようで足には獲物が握られています。

 

 

ハヤブサが止まる岩場は歩いて行くことの出来ない場所で、それを知ってか私の存在を気にすることなく獲物に喰らいついていました

画像を拡大。

 

 

間もなくカラスが現れるとハヤブサを騒ぎ立てかなり鬱陶しい様子

我慢ならなかったのかハヤブサは獲物を持ったまま私の居る下の方へ降りてきました。

 

 

その場で獲物に喰らいつくハヤブサ。

 

普段であれば距離を取られてしまうような位置にいましたが、余程腹を空かせていたのか飛ぶ気配は感じられません。

 

 

その場で獲物を喰い尽くすと元居た岩場に戻り、片足を引っ込め暫しの休憩に入ったようです。


この時点でハヤブサの観察を止めて再び探鳥しようか悩みましたが、折れた心はそう簡単には戻らずじっくりと観察できそうなハヤブサを腰を据えて見てみることに・・・

いつ終わるかも分からない休憩タイムでしたが、ぼんやりとその様子を眺めていると引っ込めていた足を元に戻し首を小刻みに動かし始めました。
そわそわとした様子で落ち着きがなくなると間もなく飛び立つ傾向にあります。


飛び立ちのタイミングを狙いカメラを構えると・・

 

 

岩場を飛び立ったハヤブサは水面付近を低空飛行。
私の眼には見えない獲物に狙いを定め一直線に飛んで行ったようです。

フレームから外れないよう連写を続け、軌道を変えた瞬間の画像を確認してみると種こそ同定できませんが狙われた小鳥の姿が写っていました。

 

 

軌道を変えた瞬間は狙いが定まらずに動きを変えたのか、それとも獲物に何等かのダメージを与えたのか・・・

ハヤブサは急上昇を見せると体を反転させて急降下。

 

 

再び水面ギリギリの位置を低空飛行したかと思うと空中戦闘機動とも思えるような複雑な動きを見せ、元居た岩場を目指し一直線に飛んできました。

 

 

狩りは失敗に終わったのかと思いましたが、岩場に戻ったハヤブサを見てみると・・・

 

捕獲した獲物の羽を毟り始めたようで、辺りに羽が散乱しています

 

 

恐るべき狩りの能力。

下から見上げる形での観察だったこともあり獲物が何なのか分からなかったことから、一度この場所を離れ回り込む形でハヤブサを上の位置から観察してみることに。

距離を詰める前にハヤブサの居る風景を撮影。

 

 

ハヤブサを少し見下ろすような位置まで移動した時、既に獲物は食べ終わっており見晴らしの良い場所で休憩に入っているようでした。

近くには簡単に捕獲できそうな鳥が居てもそちらには目もくれず、海上を渡ってくる鳥を狙うのは何故なのか。

もしかするとハヤブサは渡りで疲れている鳥を狙って襲いかかっているのかもしれません。
単に視力が良いだけではなく、そこまで識別できるのであれば渡り鳥にとっては恐ろしい存在だと思います。

 


休憩の間はあれやこれやと構図を考えて撮影の練習をしているとまたしても獲物に狙いを定めた様子。

そわそわし始めたので飛び立ちの瞬間を狙って連写。

 

 

岩場を離れたハヤブサはこの時も水面ギリギリの位置を低空飛行。

以前アオバトを襲うハヤブサを見た際にも思ったことですが、この低空飛行を見るとベレンコ中尉の亡命事件を思い浮かべます。

 

 

1976年、私が生まれた年にソ連防空軍の戦闘機が演習空域に向かう途中、突如コースを外れ急激に飛行高度を下げました。

この動きを日本のレーダーサイトが捉え、領空侵犯の恐れがあるとして千歳基地の戦闘機がスクランブル発進しましたが当時のレーダーでは超低空飛行する航空機には対応できず、ソ連軍の戦闘機は日本の領空内に入るとそのまま函館空港に強行着陸。

この時にソ連軍の戦闘機を操縦していたのがベレンコ中尉。

 

 

現在は早期警戒機が導入されたことでこの様なことはありませんが、ハヤブサが低空飛行する理由は獲物に察知されることを少しでも遅らせる為のものであるならばこれまた恐ろしい・・・

この時の狩りは失敗に終わったようで、再び元居た岩場へ。

しかし止まった場所が少し低いと感じたのか直ぐ様少し高い位置の岩場へ移動する様子が見られました。

 

 

高い位置から周囲の鳥の動きに目を光らせ、狙いを定めると一気に襲いかかるハヤブサ。

そんな姿を見ていると小鳥の渡りも命懸けで行われているのだと考えさせられる観察になりました。

 

 

ハヤブサの観察を終えた後は過去に観察してきた主要ポイントを巡回。

 


これと言って珍しい種が見られなかったことから目の前で採餌をするホオジロを暫し観察。

良いモデルさんで可愛く撮らせてもらうことができました。

 

 

前日この場所ではシラガホオジロが2羽見られたようですが、確認されたのはその日だけだったようです。

 


何気なく秋田沖を眺めると漏斗雲が出ているのを発見。
二つの漏斗雲が伸び縮みを繰り返しながら、うっすらとですが海水を巻き上げる様子が見られました。

 

 

そちらの様子は動画でも撮影。

漏斗雲の形が変化する様子を見ることができます。

 

 

結局この日はお目当ての鳥にフラれ、珍しい種を発見することのできないまま帰路につくことに。

週に一度のお楽しみもこんな結果では「月曜日から仕事が頑張れないな」と思っていたところ、突如目に飛び込んできた白い物体。

秋田市で初雪を観測。

 

 

やはり今時期は何処に何が出るか分かりません。
思わぬところに思わぬ出会いが転がっているものです。

この日は今季初のユキホオジロを見て観察は終了となりました。

 

本日の観察日記はここまで。