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2020年12月13日



本日は業務多忙につき観察はお休み。
そのため今回の日記は今年の夏、約1ヶ月に渡って継続観察を行ったアオバズクの観察記録を綴りたいと思います。

 


先ずは観察に至るまでの経緯から。
7月中旬頃『自宅近くで10日ほど前からアオバズクが毎日同じ木に止まっている』という内容で近隣にお住まいの方より情報を寄せて頂きました。

いつもカメラ片手に散歩しているとのことで、モズを目にして後を追ったところ突然真ん丸の黄色い目が視界に飛び込んできたそうです。

 


有難いことに確認場所についても詳細に教えて頂くことができたので早速見に行ってみると説明通りの木に止まるアオバズクの姿がありました。

 

 

日中にアオバズクを見るのは昨年の秋以来。

前回の観察は渡りの途中の個体を偶然発見できたもので、繁殖期の記録を振り返ってみると9年ぶりの観察です。

 

 

アオバズクは青葉が芽吹く頃に日本へ夏鳥として渡来しますが、私の知る限り秋田では良い条件で毎年観察できる場所はありません。

 

渡来は確認できても高い場所に止まっていたり、葉っぱの生い茂った場所に居たりと秋田県内においては観察難易度が高い鳥だと思います。

 

 

そのため姿を見ることができるのはナイトウォッチングの時がほとんどで、繁殖期の観察がなかなかできずにいました。

かつては秋田県内でもあちこちの社寺林や公園などで繁殖が確認されていたようですが、現在ではそのような話をほとんど耳にしません。

人の気配の多い場所で繁殖することから日本では最も身近なフクロウとされていますが、近年は営巣木の伐採や越冬地の開発が進むことで個体数は減少傾向にあり、年々観察の機会が少なくなっているようです。

 

 

今回情報を寄せて頂いたことで願ってもないチャンスが到来した訳ですが、9年前とは違った視点で観察をできるはず。
そのような思いから確認場所に足繁く通ってみることにしました。

観察初日は時間的に余裕が無かったことから成鳥1羽のみの確認でしたが、繁殖していると8月上旬には雛の姿が見られるはずです。

 

それまでの間ペアとなっているもう1羽の成鳥を確認できたらと後日足を運んでみると・・・

 

 

相変わらず同じ木に止まっていたアオバズク。
パッと見た目に雌雄の識別はできませんが、初日に観察した個体と同個体でしょう。

この時は時間に余裕があったので様々な角度から観察を行いましたが・・・蚊が酷い。

 

 

蚊に対して極度の拒絶反応をする私にとって「ここは地獄か?」と思えるほど。

蚊にとってさぞかし良い匂いを放っていたのか“ウヨウヨ”という表現がぴったりなくらいシマ蚊に集られていました。

大きく撮るだけではなく生息環境も取り込もうとズームレンズでも撮影しましたが、蚊に怯え慌てていたせいか設定が滅茶苦茶です。

 

 

じっくりと観察を行うはずが服の上から容赦なく刺してくるシマ蚊から逃げるようにしてこの場所を離脱。
結局もう1羽の成鳥を探すことすらできずに終わりました。

このままでは集中して観察することができないと考えWORKMANで防虫対策用品を一式購入。

後日の観察では養蜂場で働く方のようなスタイルで挑みました。
「もうシマ蚊なんて怖くない」と意気揚々と観察場所に行ってみると、やはりこの時も同じ木に止まっていたアオバズク。

 

 

撮影した画像を確認してみると「!?」後ろに黄色い足が。

雌雄揃って休んでいたのかと角度を変えて様子を見てみると・・・

 


「!!!!」

 

 

驚いたことに既に雛が巣立っていました。

7月下旬に巣立ち雛が見られるのは想定外。
秋田以南の地域では7月中に巣立ちを迎えるようですが、秋田では8月入ってから巣立ちを迎えることが通例なはず。

 

 

何はともあれ繁殖していたことに嬉しさを感じ幾度となくシャッターを押していました。

他にも巣立ち雛が居ないかと周辺を探して回りましたが、この日確認できたのは1羽のみ。
またもう片方の成鳥も確認できなかったことから、葉っぱの陰に隠れて見えなかったのかもしれません。

 

 

巣立ち雛を確認してから後日様子を見に行ってみると・・・

いつもの場所に成鳥の姿が見られません。
この場所を離れるには早過ぎますし、まだ他にも雛がいるはず。

何処か見えにくい場所に移動したのかと思い辺りを探してみると可愛らしくも2羽並んで止まる雛の姿が。

 

 

近くには雛を見守るようにして止まる親鳥の姿も見られましたが少々神経質になっている様子。
周囲ではモズ、ヒヨドリ、カラスが騒ぎ立てており、そちらを警戒しているようでした。

モズやヒヨドリは雛にとって脅威になることはありませんが、カラスは警戒すべき存在。
そんな相手が騒ぎ立てるのですから神経質になることも頷けます。

 

 

親鳥の気持ちは露知らず、私を覗き込むように見ている巣立ち雛。

 

 

親鳥に比べると虹彩と足の黄色は淡いようで、全体的な羽色は灰色ですがまだ雛羽が残りあどけなさを感じます。
体長は親鳥と差程変わりませんが、どちらかと言うと巣立ち雛に比べ親鳥の方が絞まって見えました。

 


やや離れた場所でモズが警戒音を発していたので、そちらへ行ってみると成鳥の姿が。
どうやらこちらが雄の親鳥のようです。

 

 

雛の近くにいるのは雌の親鳥で、雄は常に周囲を見張っているのかもしれません。

通常アオバズクの雛は3~4羽生まれるので順調に繁殖しているならもう1~2羽の巣立ち雛が見られるはず。

後日に楽しみを残しこの日の観察を終えましたが翌々日、秋田県は災害級の大雨に見舞われました。

 

 

河川は増水し氾濫した場所もあり冠水による通行止めも。

この大雨で心配だったのが巣立ちを迎えて間もない雛たちの様子。
雛羽の状態では保温性に乏しく長時間雨に晒されると体温の低下を招いてしまいます。

私はアオバズクの観察経験が少ないので巣立ち雛がどれほど雨に対して耐性があるのか分かりませんし最悪のケースも頭を過りました

居ても立っても居られず様子を見に行ってみると・・・

 


雨宿りをしていた3羽の巣立ち雛。

 

 

この繁殖地では一番雨の凌ぎやすい場所で、もしかすると親鳥が意図的に移動を促したのかもしれません。
嬉しさよりも安堵の方が勝ったのか強い脱力感に襲われました。


その後も継続して様子を見に行ってみましたが、4羽目の巣立ち雛は確認できなかったことからこの場所で今年生まれたのは3羽だったようです。

徐々に行動範囲が広くなったようで、日を追う毎に観察は難しくなりつつありました。

 

 

お盆の頃になると親鳥と共に巣立ち雛も確認できなくなったので渡りを前に場所を移動したのかもしれません。

今回このように観察をすることができたのは近隣の方に情報を寄せて頂いたお陰で、改めて感謝申し上げたいと思います。

また来年この場所へ帰ってきてくれることを願い、約1ヶ月に渡るアオバズクの観察記はこれにておしまいです。