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2020年1月25日 2/-1℃ 曇り時々雪




今回は大潟村及びその周辺を巡回連絡。

記録的暖冬の影響は野鳥にどのような変化をもたらしているのか?という思いから、いつもとは違った視点でフィールドを巡回してみることにしました。

例年であれば大潟村を囲むようにして残る水路(元の八郎湖)は全面結氷している時期ですが、今季は未だ凍る気配が見られません。

結氷することで氷上に佇む大型猛禽も今季は見られずということでフィールドを回っていると一枚の田んぼに大型猛禽が4羽集結している場面に遭遇しました。

確認してみるとオオワシ若とオジロワシ若。
各々年齢が異なり羽の特徴も様々。

 

 

一枚の写真に全ての個体を写すことは難しく、どのように撮影しようか迷いましたが下手に動くことはできません。

秋田で見られる大型猛禽は警戒心が強く、かなり離れた場所であっても車を停車させただけで飛ばれてしまうことは当たり前。

 

 

出たところ勝負といった感じでしたが、この時は上手いこと距離を縮めることができ更にちょっとしたテクニックでローアングル且つ近距離で観察することができました。

彼等の目に私は一体どのように映っているのか。

 

 

一頻り観察したところでいつものオオワシの様子を確認。

相変わらずのんびり過ごしているようで何より。

 

 

この個体に関してはもう良い写真を撮ろうという気持ちは一切無くなりました。
ただ元気であればそれだけで良い。

オオワシに挨拶をしたところで再び巡回していると、オジロワシ若を発見。

しかしこちらは直ぐに飛び差ってしまいました。
画像を確認してみると、こちらを気にしている様子が見て取れます

 

 

目線だけで相手が如何にこちらを警戒したかが分かるアウトな写真
秋田では大型猛禽との距離感が難しいと感じさせられる一コマです

ちょっと別の場所ではオジロワシ成鳥も見られました。

 

 

こちらは辺りを大きく旋回するとこちら側に向かって飛んで来たので下手な鉄砲を数撃ってみたものの、これが全く当たらず・・・。

頭上を通過してくれましたが全てピンぼけ画像。

 

 

原因はヒーターを付けていたことによる温度差。
車内で撮影する場合、外気との温度差が大きくなると空気が揺らいでしまうためピントが合わなくなってしまいます。

このため普段は真冬でもヒーターを切っていることの多い私ですが、この時はうっかりしてました。


狭い範囲で確認できたオオワシとオジロワシは被りがなく9羽と、ちょっと多すぎる印象。
大潟村周辺で越冬する大型猛禽が集結していたとするならおかしくない数ですがそれは考え難いので、もしかすると暖冬の影響により他地域で越冬している個体が北上してきたのかもしれません。


続いてガンの観察を行いましたが、今季は北帰行が早く秋田県以南で越冬する個体群が次々に北上しているようです。

ざっと流す形で群れを確認しましたがシジュウカラガン500~600羽の群れも確認できました。

 

 

おそらくこちらは宮城県で越冬する個体群。
以前は大潟村でも大きな群れを見ることができていましたが、現在はほとんどの個体が宮城県で越冬するようになりました。

その為シーズン中は個体数が少なく纏まった群れを見ることができるのは渡りの時期のみ。

宮城県と言えば日本初記録のアオガンが大きな話題となりましたが、どうも北帰行の群れに混ざって宮城県を離れたようで秋田県内に滞在している可能性が高く、そちらも合わせて探してみたものの残念ながら発見には至らず。


秋田で観察できる代表的な冬鳥と言えばハクガン。
場所によっては自宅の茶の間から群れを観察できるのが秋田クオリティ。

 

 

この時に見ることのできた群れは割りと大きくアオハクガンが混ざっているものと思いましたが、1羽1羽確認してみたもののアオハクガンは確認できませんでした。

どうもこの日は群れがかなり分散していたようで、あちこちで小さな群れを確認。
こちらはアメリカコハクチョウとハクガンのコラボ。

 

 

結局この日はアオハクガンを確認できずに終わりましたが、一体何処に行ってるのか・・・。

巡回してみて思ったことは、秋田県に北上してきている個体群が多いわりに大潟村周辺においては個体数が爆発的に増えたという印象は感じませんでした。

 

 

昨年12月19日には秋田市上空を大潟村方面に向かって次々とガンの群れが北上しているのを目にしましたが、通常であれば北帰行でガンの群れが秋田市上空を飛ぶのは2月中旬頃から。

 

 

大型猛禽に続いてこちらも仮説になってしまいますが、秋田県で越冬する個体群が既に北上しているのではと考えました。
そこに補填される形で秋田県以南で越冬する個体群が渡ってきているのであれば、数の増減が感じにくいのかもしれません。


ガンの観察を終えて狩り場に行ってみるとコミミズクが3羽飛び回っていました。

 

 

1羽はカラスに追い回されて落ち着かない様子で、地面に降りても直ぐに飛び立ってしまいます。

相変わらず私は良い形でコミミズクを見ることができません。

 

 

この後はどうしようか考えていたところ、いつものバーダー氏より連絡があり『住宅街にキレンジャクが300羽ほど入っている』とのことでした。
せっかくのお膳立てですので有り難く頂戴することに。

現地に到着すると電線に並ぶキレンジャクの群れ。

 

 

数が数だけに鳴き声も賑やかですが、それ以上にフンが凄い。

道路を跨ぐ形で電線が通っており、そちらの電線に止まるキレンジャクの群れの真下を撮影した画像がこちら。

道路がオレンジ色に染まっています。

 

 

御仁曰く、この電線に止まる前は柿を食べていたとのこと。

レンジャクという鳥は消化器官があまり発達していないのか、食べたものは形を残したまま排泄されるようで、こういった痕跡から何処で羽を休めていたのか手に取るように分かりました。

真下にいると爆撃されるのでちょっと角度をつけて撮影。

 

 

夕方まで粘ってみたものの、御仁が一人だった時に比べ民家の軒先などカメラを向けにくい場所で採餌をすることが多く、残念ながら良い場面を見ることができないままこの日の観察終了。

今週末は連休になったことから、翌日はハクガンの塒立ちを観察するという計画を立て早めの就寝をするはずでしたが・・・

 

日没を迎えすっかり暗くなった頃、自宅近くを走行していると路肩に鳥と思われる物体を目にしました。

「今の・・・鳥だよな・・・」

大きさ的には猛禽類だったように見え、気になったことから車をUターン。
低速で車を走らせ横目に確認できたのは紛れもなくノスリでした。

しかしその姿勢はあまりにも不自然。
死んでいるのであれば横たわっているのが普通ですが、尻もちをつくような姿勢のまま体は起きています。

再びUターンをして路肩に停車し、車のライトに照らさせるノスリは瞼を閉じたまま微動だにしませんでした。

車を降りて、恐る恐る触れてみたところ温かい。

「まだ生きてる!」

しかし片方の翼が変な方向に折れ曲がっており、どうやら車と衝突し事故に遭ったようです。
この場所では危ないと思い、取り合えず場所を移動しようと持ち上げてみたところ足をバタつかせ引っかかれてしまいました。

私の手が出血するほどの力強さでしたが、翼がこの状態で餌を捕るのは不可能でしょう。
例え場所を移動したところでこのまま放置してしまうとその先に待っているのは死あるのみ。


私は今まで沢山の野鳥を保護してきましたが猛禽類を保護したことがなく、一瞬躊躇を覚えました。

しかしこのままにはしておけず車の助手席に乗せて自宅へ救急搬送
自宅玄関で撮影した画像ですが、この状態で路肩にうずくまっていました。

 

 

足を前に突き出す形で尻もちをついているようです。

しかし持ち上げた際に足を骨折しているような感じはしなかったので、私の祖父の形見である杖に止まらせてみることにしました。

 

 

一応自立できましたが羽が開いてします。

少し様子を見ましたが、止まっていることが辛そうだったことと羽を開いたままでは体温が低下してしまうので、ダンボールにタオルを敷いて様子を見ることに。

 

 

時々目を開いてくれますが辛そうです。
連れてきたまでは良かったものの、時間的に鳥獣保護センターに電話をかけても繋がりません。

野生の猛禽類は厳しい自然環境で生きているので空腹にはある程度耐える力はあると思いますが、この個体が最後に餌を捕ったのは何時なのか分かる術もなく・・・。


この時の私にできるのは保温しかありませんでしたが、あらゆるルートを駆使して何とかこのノスリが生きる手段を考えました。

当初、大森山動物園を経由して保護センターの移送も考えましたが大森山動物園は過去の鳥インフルの問題から野鳥の搬入を断る可能性が高かったので苦肉の策で最寄りの交番へ。

拾得物という扱いにはなってしまいますが、警察を経由することで日曜日であっても鳥獣保護センターの職員が朝イチで引き取りに来てくれる運びとなりました。

紆余曲折あって交番へノスリを搬送すると・・・

 


警察官A『うわっ、でけぇ』

警察官B『フクロウみたい』

警察官C『これは絶滅危惧種のオガサワラノスリですか?』

「ち、違います・・・」

 


私がノスリという猛禽類を保護したという電話から、到着するまでの間にネットで調べたのでしょう。

時間帯として通常睡眠していることと、怪我をしていることから暗い部屋で安静にさせてもらいたいと伝えると、会議室が暖房が効いていて暖かいとのことでノスリとはここでお別れ。

 

 

何で私はあの時に一瞬でも躊躇したのか、未だに頭の中で堂々巡りしています。

翌日の朝、7時半頃に交番から連絡が入り『鳥獣保護センターの方が引き取りに来てくれた』とのことでした。

警察を介したことで対応が早く今はこの選択で本当に良かったと思います。
移送されたノスリは27日正午現在、特に弱っている様子は見られないとのことで一安心しました。

今後は給餌をしっかり受けてくれるのかが課題になると思いますが、野生復帰が難しくとも元気になってくれることを願っています。

 

 

本日の観察日記はここまで。