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2020年3月13日




今回は地元秋田を離れての観察旅行記。

 


毎度の如く旅行に際して一番気掛かりなのは天候ですが、今回は天候まで頭が回らない程の予期せぬ事態に直面しました。

“新型コロナウイルス感染症”

中華圏の旧正月である春節に併せ多くの中国人が訪日して以降、感染経路の分からない感染者の確認も相次ぎ連日のように報道されています。

日々更新される感染者の数や政府からの発表は刻々と変わり報道に耳を傾ける日々が続いていましたが、有識者の見解は其々異なり情報の精査には苦慮させられました。

リスクを回避するという意味では必要最低限外出を控えることが妥当でしょう。
しかし今回の観察地の特異性や春節から現在までの推移など総合的に考えた結果、遠征は予定通り実行する判断を下しました。


今回の遠征で感染のリスクが高いのは目的地までの移動時。
ここさえクリアできれば感染の可能性は低くなるので移動の際は予防を徹底。

 

行くからには ❝貰わない・感染させない❞ が絶対条件になるのでマスクをするのは当たり前で、過剰なほどアルコール消毒を繰り返しスマホもこまめに消毒。

固いものに付着したウイルスは生存時間が長いということで今回は腕時計も外し、ありとあらゆる面で対策を講じました。

 


しっかりとウイルス対策をしたうえで朝一番の便で向かうのはこちら。

 

 

私にとって三回目の石垣島。
羽田空港から新石垣空港までは約3時間ほどのフライトです。

各種イベントの中止や入国規制の影響からか空港は閑散とした様子でしたが、石垣島に向かう便だけは例外といった雰囲気で搭乗口は非常に混雑していました。

私は少しでも感染リスクを下げるため搭乗するまで離れた場所で待機。

 


混雑していたせいか出発が15分ほど遅れて羽田を離陸しましたが、出発が遅れた場合は遅れを取り戻す為に安全に支障がない範囲で速度を上げるはず。

しかしコロナショックで経営が圧迫されているのか巡行速度での低燃費飛行。


定刻より15分遅れで『 南ぬ島 新石垣空港 』へ到着。

 

 

無事に石垣島に到着したので早速観察へ・・・

と言いたいところですが、今回の石垣島は中継地。
ここから更に乗り継ぎで目的地を目指します。

 


しかし乗り換え便が出発するのは10時10分と時間に余裕がないなか、撮影機材など手荷物を預けていたことによりスムーズに乗り換えをすることができず、かなり慌ただしい乗り換えとなりました。

ギリギリで乗り換えを済ませ石垣島を離れましたが目的地までは約30分のフライト。

あっという間に見えてきたのは日本の最西端に位置する与那国島。

 

 

初めて見る与那国島は石垣島をコンパクトにした印象で、これから始まる探検に心が躍りました。

タラップを降りてこじんまりとしたターミナルには徒歩で移動します。

 

 

手荷物を受け取り空港から徒歩1分の距離にあるレンタカー屋で車を調達。
店員さんからは『与那国島は周囲28kmで、車で一周すると1時間ほどで回れる小さな島です』との説明がありました。

ネットで先人たちが残した観察記に目を通し、それを参考に探鳥をしようと思いましたが小さな島ということもあり今回参考にするは貰ったパンフレットのみ。

 

 

最果ての地で探鳥ならぬ探検のはじまりはじまり。

 

 

2020年 野鳥観察の旅 in 与那国島 ①

 

 

さて今回の旅での目的は・・・特になし。
私が地元を離れて観察したいと思うのはその地域でしか見られない固有種ですが、このところの旅では有名な観察地巡りの面も出てきました。

今回は「数多くの渡り鳥が観察される与那国島ってどんなところなんだろう?」という単純な思い付きから遠征を企画。

それに加え日本の最西端に行ってみたいという思いも相俟って与那国島へやって来ましたが、これといった目的もないので探検がてら車を走らせていると目に飛び込んできたのは与那国馬。

 

 

与那国島は北側に祖納、西側に久部良、南側に比川の3集落があり、島の東側と西側のエリアには馬や牛が放牧されていました。

道路にも出てくることは当たり前。
そんな非現実的光景を見ることで与那国島に来ていることを実感されられます。

 

のんびりとその様子を眺めていると馬の足元をちょこまかと動き回る小鳥が・・・

馬にまとわりつくようにして動く鳥が気になり近寄ってみると、小鳥の正体はツメナガセキレイであることが判りました。

 

 

夏羽に移行中のようで疎らに黄色い羽が見られます。

ツメナガセキレイは1羽だけではなく、あちこちにいるといった感じで馬のウンチのお立ち台に佇む姿も。

 

 

暫くツメナガセキレイを観察していましたが下草を食べる馬の口元に来ることが多く、もしかすると食い千切られた草の隙間から出てくる虫を目当てに馬に執着してたのかもしれません。

ここで見られるツメナガセキレイの多くは馬だけではなくウンチに執着する個体も多く、どうやら餌を採るのに好条件のようです。

 

 

そんなツメナガセキレイを観察した後は島の東側突端部に位置する東崎(あがりさき)へ。

 

 

こちらでも与那国馬が放牧されていましたが、ツメナガセキレイとは違った鳴き声を発する小鳥が沢山。

こちらは秋田で観察例のないマミジロタヒバリ。

 

 

日本には旅鳥または冬鳥として渡来するようですが西日本や南西諸島で見られることが多いようです。

また、九州南部や南西諸島では少数が越冬するのだとか。

足が長く姿勢が他のタヒバリとは違うので、立ち姿を見るだけで識別は容易かもしれません。

 

【 背面 】

【 正面 】


 

ツメナガセキレイほどではありませんが、東崎周辺では数多く見られたものの警戒心はツメナガセキレイより強いように感じました。

そのため観察するにあたっては徒歩で突端部周辺を探すより、東崎駐車場付近に居る個体を探し車内からの観察が良いようです。

 

 

マミジロタヒバリに混ざってムネアカタヒバリも見られましたが、こちらは夏羽に移行中の個体が多いようでした。

ところどころに夏羽が見られます。

 

 

こちらの鳥は秋田でも観察のチャンスはあり、秋田を通過する頃には綺麗な夏羽に換羽していることでしょう。

但し地元では観察例が少ない鳥なので出会えるかどうかは運次第。

 

 

春の渡りの時期には東崎でヤツガシラやオオチドリが観察されるようで、私としてはオオチドリが見れたらと淡い期待を持ってやって来たのですが見ることができたのはほんの数秒。

しかも頭上を通過していく姿。

 

 

後日Twitterを見ていると東崎で声を掛けてくれた大学生バードウォッチャーの2人組がオオチドリをバッチリ撮影した画像を掲載しており、オジサンとっても羨ましかったです。

一体いつ見つけたのだろう・・・
しっかり観察できなかったことは残念ですが、今回は通過個体を見逃さず証拠写真を残せた自分を誉めたい。

 


オオチドリを外した残念な気持ちを癒してくれたのはツバメチドリ

 

 

既に夏羽に移行していました。

東崎から西の方向に下っていくと田畑が広がっており、乾いた畑にムナグロが約200羽とツバメチドリが約30羽が群れていましたが畑の色合いがいい塩梅に保護色になっていてパッと見た目には気付かず通過してしまうかもしれません。

 

 

観察を続けていると不意に飛び立つことが多く、周囲を飛び回ると降りては飛んでという行動を何度も繰り返していました。

 

何の為の行動なのか気になり撮影した画像を検証してみると虫を咥えている個体を発見。

どうやら飛び回っていたのは飛翔している昆虫を捕まえる為の行動だったようです。

 

 

この後は祖納の住宅地でインドハッカを観察しましたが、後日観察した方が条件が良かったのでインドハッカについては割愛。

島を東側から西側へ移動し与那国島のホットスポットとされる小学校や中学校の校庭を覗いてみましたが、私が見た時はタイミングが悪かったのかこれといった鳥を確認することはできず。

ヤギが飼われてる芝生の校庭もあり、タイミングさえ合えば珍鳥との出会いが期待できる場所だと感じさせられました。

 


久部良小学校の近くでは広い池を見つけ、こちらに何か入っていないかと車を進めていくと白っぽいカモがいるように見えましたが脳内図鑑と合致するカモが思い当たりません。

この時、既に血圧は急上昇。
そろりそろりと車を進め藪の隙間から見えたのは・・・

 


なんとびっくり、ソリハシセイタカシギ。

 

 

脳卒中で倒れるかと思いました。

いつか見てみたいと思っていた鳥が目の前に。
しかも複数羽いる光景に驚きを隠せません。

ソリハシセイタカシギは足が見えない状態で浮いているのか、ギリギリ足が底に着いているのか分からない状態です。

採餌が始まったので少し回り込み藪の隙間から観察しているとカモのように逆立ちをするような姿勢で餌を採っている様子が見られました。

 

 

移動しながら採餌を続けるソリハシセイタカシギは私の位置から見えなくなってしまい、戻ってくる様子がみられなかったことから大回りする形で池の様子を見てみると群れで羽を休めていたようです

こちらは高台から撮影したものですが距離が離れているので画像を拡大。

 

 

与那国島でソリハシセイタカシギが見られるとは想定外の出来事で私にとっては非常に嬉しい出会となりました。

ソリハシセイタカシギを観察した後は久部良の住宅地を進むと電線にずらりと並ぶ小鳥を発見。

場所が場所だけに目に入る鳥は全てチェックする必要があります。
確認してみるとギンムクドリの群れであることが分かりました。

 

 

しかしこの場所は角度が悪く、場所を変えて見てみるとギンムクドリの群れの中にカラムクドリが2羽。

 

 

暫し眺めていましたが、1羽飛び立つと続々と飛び立ち林の向こう側へ。
周囲を探して回りましたが残念ながら発見には至らず。

ギンムクドリの群れに見切りをつけたところで久部良漁港近くのナーマ浜を覗いてみるとセイタカシギが1羽。

 

 

私のなかでセイタカシギと言えば田んぼに居る鳥。
海に居ること自体に違和感を覚えますが、エメラルドグリーンの海で見るセイタカシギはとても美しく見えました。

浜辺を歩きながら近寄ってきたセイタカシギは飛び立って場所を移動。
目の前を飛んでくれたお陰で海を背景にした写真に。

 

 

ナーマ浜を少し進むと西側突端部の西崎(いりざき)へ到着。

ここには日本最西端の碑がありました。

 

 

ここから隣国である台湾までは111kmの距離。
天気の良い日は台湾が見えるそうです。

この後は3集落の最後である比川へ向かいましたが、鳥の観察よりも先にこちらの建物へ。

ドラマ『Dr.コトー』の診療所。

 

 

しかし私はドラマを見ていないのでこれといって思うことは無し。
秋田に戻ってからドラマを見てみると思い出に浸れるかと思い訪ねてみました。

この診療所近くには休耕田があったので日没までシギチの観察。
秋田ではなかなか見ることができないアカアシシギ。

 

 

休耕田で一番多く見られたのはタカブシギ。
次いで見られたのがコチドリ。

ジシギも少数いましたが、確認する前に飛ばれてしまい詳しいことは残念ながら判りませんでした。

私が与那国島に滞在中、綺麗な形の水張り休耕田を見たのはここ1ヶ所のみ。
おそらく過去は水張り休耕田だったと思われる休耕田を幾つも目にしましたが、いずれも草がボーボーの状態。

 

 

そんな休耕田で身を潜め餌を採るシギチや小鳥は多いので注意深く探す必要があるようです。

整備された状態であればもっと好条件で観察できると思いますが、もしかすると年々観察し辛い状況になりつつあるのかもしれません

こちらはコホオアカ。

 

 

こちらでは2羽見ることができましたが追いかけ合うように飛び回り、落ち着いた形で観察することが出来ませんでした。

 

 

この日は他にも沢山の鳥を観察しましたが、少々長くなったので後日の日記に振り分けて紹介したいと思います。

観察を終えたあとは民宿で夕食。
与那国島ではカジキマグロの漁が盛んに行われているようでお刺身を戴くことができました。

 

 

居合わせた宿泊客と話題となるのは案の定コロナウイルス問題。
民宿の女将さんの話によると今時期はハンマーヘッドシャークに会える時期でダイビング客が多いそうですが、客足が鈍くなっているとのことでした。

 


『正直な話、ウイルスは恐いけど今の状況がいつまで続くのか不安。自粛、自粛でお客さんが少ない状態がこのまま続くと・・・』

そんな女将さんの言葉を耳にして観光地は客商売をされている方にとって自粛が一番のダメージなるのだと思わされる夕食タイムでした。


一息ついたところでドッと疲れが押し寄せこの日は早めの就寝。
翌日の様子は後日更新の日記へ続きます。