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2020年8月13~14日 29/24℃ 曇り時々晴れ




今回の日記はアオバトの観察記。

短い夏季が始まり初日と二日目はアオバトの観察に勤しみました。
繁殖を終えたアオバトが海沿いに飛来するようになり、海水を吸飲する姿は夏の風物詩となっています。

私にとってアオバトの観察はこの時期恒例と言えますが近年は観察が難しくなっており、理由となっているのが気候変動。
地球温暖化に端を発する海水の熱膨張や大陸氷床の融解などで海面が上昇し、観察地となっている浜辺が著しい変化を見せています。

 


先ずは8年前の夏に撮影した画像から。

 

 

浜辺に飛来したアオバトの群れを撮影したものですが、当時の浜辺は車で移動することができるほどで浜辺からの観察も容易にすることができました。

そのためアオバトが飛来するポイントさえ絞ることができれば車内からゆっくり見ることができたので、晴れの日の光線の良い時間帯を狙って観察をした記憶があります。

 

 

しかし現在は海岸侵食の影響で浜辺の消失が進み、とてもではありませんが車を走らせることはできません。

僅かに残った砂浜は漂着ゴミで埋め尽くされ環境の悪化が目に見える形で進んでいます。

そもそもゴミをポイ捨てすることに問題がありますが、ゴミが多く漂着する原因も気候変動が影響しているのは間違いありません。
年々増える災害級の大雨で河川から流れ出たゴミが漂流し最終的には浜辺へ漂着します。

 

 

それに加えて海岸へ人の流入が多くなることで警戒心の強いアオバトはなかなか降りてくることができず、待機せざるを得ない時間が長時間続くようになりました。

その様な訳もあって今季から観察場所を変えてみることにしましたが、これが想像以上難しい結果に・・・


先ずは行動パターンの把握から。

 

 

海岸と洋上を行ったり来たりする様子を遠巻きに確認できましたが飛来場所を特定できません。

およそ100羽ほどのアオバトがいるようでしたが、小さな群れに分散したと思えば大きな群れに纏まったり。
距離が遠くなったと思えば目の前を通過したりと行動パターンが全然読めませんでした。

 

 

警戒心の強いアオバトは人の動きも気にしますが、動いている車もアウト。

付近の木に止まって周囲の様子を伺っているようで、常に海水を吸飲するタイミングを見計らっています。

 

 

先発隊となっている個体が1羽降りると堰を切ったように次々と群れが飛来し海水の吸飲を始めますが、何かに警戒すると一斉に退散

延々と続く海岸では以前見ていたような距離での観察は難しいと感じました。

遠巻きでの観察が続きなかなか良い条件での観察ができないでいたところ、私の車の近くへ小規模な群れが飛来し海岸へ降りるタイミングを見計らっているようです。

 

 

下手な動きを感じ取られないよう予めカメラを構え飛来の瞬間を待つことにしました。

ここまでに既に2時間は経過していたでしょうか。
そして訪れた間近での観察のチャンス。

 

 

次々に飛来したアオバトたちが海水をゴクゴクと飲んでいます。

波飛沫がかかってもお構い無し。

 

 

ミネラル補給の為と言われていますが、アオバトが海岸に飛来するのは夏~秋にかけて。

この時期は毎日のように海水を吸飲することを考えると大量にミネラルを補給しなければいけない体質なのかと思いますが、他のシーズンはどの様にしてミネラルを補給しているのでしょうか。

 

 

ある程度観察を続けると頻繁に飛来する場所を把握することができたので、後は山を張って待つのみ。
非常に根気のいる作業でしたが、頑張った甲斐もあって様々なシーンを見ることができました。

打ち寄せた波に飲み込まれそうになる場面。

 

 

他県ではアオバトの観察で有名になっている場所もあるようで、そちらでは高波に浚われ命を落とす個体もいるそうです。

 

 

私が観察している際にも溺れそうになり水面で羽をバタバタさせる場面がありましたが、そのような個体を狙ってハヤブサが急襲するのだとか。

去年まで観察していた浜辺では波に浚われる心配はありませんでしたが、ハヤブサに捕食されるアオバトを毎度のように目にしていました。

 

 

自然の摂理とは言え観察していた鳥が目の前で襲われるのは非常に辛いものがあります。

 

 

この場所では波に浚われる危険性もあるようなので、人の目に触れないところで厳しい現実が繰り広げられているのかもしれません。

何処の地域でも例外なくアオバトの海水吸飲は『命懸け』で行われているようです。

 

 

さて日記の冒頭からアオバトが海水を飲む様子を“吸飲”と記載していますが、これはハト独特のもの。

一般的に鳥は下嘴に水を溜めたあと上を向くようにして水を飲み込むのに対し、ハトは口腔の陰圧によって水を吸飲できるため水中に嘴を浸けたままの姿勢が続きます。

前傾姿勢が多くなるので下尾筒の特徴もバッチリ。

 

 

翼上面がブドウのような色をした♂は特に美しく、個人的には日本で見られる鳥類のなかで一番美しい鳥であると思います。

美しいだけではなく尾羽を海水に浸す謎の行動を見せてくれたりと、久しぶりに夢中になってシャッターを押していました。

 

 

環境の変化に伴い渡来する場所にも変化が見られ観察は過去に比べると格段に難しくなってしまいましたが、今後も機会をみて観察を行いたいと思います。

本日の観察日記はここまで。