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2020年8月30日




今回の日記はオオジシギの観察記。

以前の日記では予告として少しだけ観察の様子に触れていましたが、その後も観察を続け様々な場面を見てきました。
今回は約1ヶ月間の観察を纏めて綴りたいと思います。

 


先ずは遡ること今月4日の夜、自宅横の田んぼでジシギの鳴き声を確認。

オオジシギは日本に夏鳥として渡来し北海道~本州北部で繁殖をしますが、自宅横の田んぼでは繁殖を確認したことがないのでこちらで観察をできるのは渡りの時期のみ。

そのため自宅近くで南下中のオオジシギを観察するための目安としており、鳴き声を確認して以降週末毎にじっくりと行いました。

観察の方法は農道や畦道、畑を丁寧にチェックして回るというシンプルなものですが、かなりの注意力が必要となります。

観察初日は雨上がりの曇り空でオオジシギの観察には好条件
至るところで苦労することもなく次々とオオジシギを見つけることができました。

 

 

こちらの写真、左側の畔に2羽のオオジシギが見えますが実は右側の畑にも2羽のオオジシギが写っています。

原画では分かりにくいため画像を拡大し矢印を付けてみました。
拡大画像を見てから原画を見直すと複雑な羽の模様が保護色になり擬態効果を生み出していることが分かります。

 

 

オオジシギだけではなくジシギの共通の特徴として警戒すると身を屈めるように伏せてしまうので、如何にして先に見つけることができるかが観察の鍵になるでしょう。

偉そうに言ってみたものの実際は足元から飛び立つまで気付かないことが多く、絶好のチャンスを逃すことがほとんど。

ある程度距離が離れていると伏せることがないため発見は容易です
農道や畦道を一本一本見て回り、確認できた個体たち。

 


 

オオジシギを見つけた際、警戒範囲内に入ってしまうと走って距離を取られてしまいます。

ほとんどの個体は農道と農道の中央、つまり田んぼの真ん中辺りまで移動してしまうので細部に渡って観察するにはちょっと遠い距離

スコープで観察するには問題のない距離ですが、撮影をするには「少し遠いな」と感じるので他の個体を探すか根気強く近付いてくれることを待つ他ありません。

 

 

雨上がりの曇天では農道に出て餌を採る個体も多く、畦道にいる個体に比べると観察しやすいように思います。

嘴を地面に挿してミミズを捕食しているようですが、ここがタシギと違う点。

あくまでも個人的な印象を元にした話になりますが、オオジシギは水張り休耕田のような一般的にシギチが好むような場所で餌を採ることは少ないと感じます。

 

 

水張り休耕田でシギチを観察しているとタシギも併せて見る機会がありますが、オオジシギは農道や畦道で採餌をすることがほとんど

行動のパターンとしては畔と稲の間を歩き、畔を突っつくように採餌を行うと畦道の上に出てきます。

 

 

反対側の田んぼに降りると再び採餌を行い畦道に沿ってジグザグに歩きながら移動すると言えば分かりやすいでしょうか。

 

 

タシギに比べると積極的に水辺に入らないという印象が強く、自宅近くには枝豆の畑が多いのでこの様に畑に居る姿もよく目にします

畦道と同様に畑も餌が採りやすく、身を隠しやすいといった点ではオオジシギにとって好ましい環境なのかもしれません。

 

 

ジシギを観察する上でタシギをしっかりと観察することが識別の基本になるとも言われていますが、識別ポイントが多く様々な特徴を覚えるのは至極困難。

識別の鍵となるのは尾羽の確認ですが、不意に訪れるチャンスを物にできるとは限りませんし距離が遠かったり角度が悪いと画像を拡大しても確証が持てません。

 

 

そこで私のような面倒臭がりの方にお勧めなのが翼を開いた瞬間の観察。
オオジシギ、チュウジシギ、ハリオシギには共通の特徴があり、翼下面が暗色に見えます。

 

 

タシギの翼下面は明るく淡色に見えるため、これを見るだけで非タシギであることが分かるでしょう。
但し、光線の状態や角度によっては明るく見えたり暗く見えたりすることもあるので参考程度に。


次々にオオジシギを確認することができましたが、遠巻きの観察が続くと誰しも近くで見たくなると思います。

私がジシギを好んで観察するようになったのは目の前で偶然見ることができたタシギとの出会いがきっかけでした。

最近になって識別点に注意するようになって観察を行うようになりましたが、それまでは単純に可愛いという印象だけで見ていました
その点については今も変わりませんが、ジシギは近くで見れば見るほど可愛らしい鳥であると思います。


そんな可愛らしい姿を間近で見るにはある程度の運と根気が必要になりますが、のんびりとした個体との出会いを探しあちこち見て回ると・・・

 

 

農道脇の側溝付近で採餌をしていたオオジシギを発見。

直ぐに車を停めて様子を伺うとあちらも私の様子を伺っているようでした。
しかし直ぐに距離を取ろうとはせず、暫く見ていると徐々にこちら側に。

 

 

この個体は目の前までやって来ると確信し、警戒させないよう私の動きは必要最低限に留めファインダー越しに観察を続けました。

時々田んぼ側に降りてしまい姿が見えなくなることがありましたが、姿を見せた時にはどんどん距離が縮まっていきます。
やはりこの時も畔をジグザグに歩いていたのでしょう。

かなり距離が縮まったところで口を開きましたが、この時に見せたのは嘴の柔軟性。

 

 

上嘴が反り返っているのが見て取れます。
クネクネと動かして見せましたが、これはオオジシギだけの特徴ではありません。

こちらは以前観察したチュウジシギの画像ですが、同じように上嘴が反っています。

 

 

想像の範疇ですが、この嘴がセンサーのようになって土壌に潜む生き物を探知しているのではないでしょうか。

闇雲に突っついているように見えるだけで、実際は巧みに嘴を動かし目には見えない生き物を感知して引っ張り出しているのでは・・

以前はジシギだけの特徴なのかと思っていましたが、ダイシャクシギが同じように上嘴を動かすシーンを観察したことがありました。

 

 

こちらは嘴が元々下に反っているので、上嘴が真っ直ぐに動いている様子です。

トウネンも同様に嘴をクネクネ動かす姿を見ることがあるのでシギ類共通の特徴なのかもしれません。

話が脱線してしまいましたが、畔の陰に移動したオオジシギは暫く姿の見えない時間が続き遠ざかってしまうのか、はたまた目の前に現れるのか固唾を飲んで待っていると・・・

 


目の前に姿を現しました。

 

 

根気よく待ったことが報われた瞬間。

この距離になると肉眼でも羽の一枚一枚をはっきりと見ることができ、撮影したい気持ちと肉眼で観察したい気持ちが入り乱れてしまいます。

伸びの姿。

 

 

残念ながらこの時は腋羽の特徴を見ることができませんでしたが、外側尾羽を見るとオオジシギの特徴が出ています。

聞きなれないシャッター音が気になったのか、撮影する私が何者なのか首を傾げながら繁々と見ている様子。

 

 

可愛いという他ありません。

許されるならば捕まえて撫でたり匂いを嗅ぎたい・・・そんな衝動に駈られました。

あまりにものんびりとした時間が続いたものでちょっとだけ動画撮影を。
動画の後半には伸びをする姿が含まれます。

 

 

動画を撮影していると採餌を始めたため静止画に切り替えましたが、側溝を飛び越え農道に移動したそうな素振りを見せました。

 

 

画質を良くしようと低感度で撮影していたことが仇となり、シャッター速度が1/160しか稼げず肝心なシーンはブレブレ。

農道に移動したオオジシギは停車角度が悪く、こちらを撮影した後は遠ざかるまで肉眼での観察が続きました。

 

 

この日はおよそ50羽のオオジシギを確認することができましたが、翌日になると10羽に激減。

夏季休暇に入りアオバトの観察後にオオジシギを探してみると13日が4羽、14日が12羽、16日が7羽と数を減らしながらも上下を繰り返していました。

 

 

先週22日の土曜日は2羽の確認に留まり、観察最終日のこの日は不明ジシギが1羽飛んだのを目にして終わりました。

このことからオオジシギの秋田の渡りのピークは8月上旬であったと言えます。

年によって変動があると思いますが、8月下旬には秋田から姿を消し越冬地のオーストラリアを目指し南下していることが判明しました。

 

 

今回この様に観察を継続してみましたが、視点を変えると来季はまた新たな発見があるでしょう。
しかし私はどうしても「可愛い」が先行してしまうので有識者を唸らせるような観察をすることはできませんが観察のスタイルは人其々。

 


私なりの観察を今後も楽しみ、これから増えてくるタシギとの出会いに期待したいと思います。

 

 

約1ヶ月に渡るオオジシギの観察記はこれにておしまい。