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2021年3月20日 14/-1℃ 晴れ

 

 

 

 

快晴の春分の日。

 

お天気に恵まれ絶好の観察日和になるはずでしたがまたしても休日出勤。

この時期の休日出勤は本当に精神衛生上よろしくありません。

 

渡りのシーズンの先駆けとしてヤツガシラが渡来する頃でもあり「こんな時に限って出るんだろうな」と悶々としながら仕事をしていると・・・

 

 

案の定、いつもの御仁より確認情報が飛び込んできました。

 

 

正直なところ「嫌がらせか?」とも思えるような見事な写真で、観察に出ることができない状況に歯痒さを覚えます。

 

翌日の日曜日は低気圧が発達しながら北日本を通過する予報で観察は絶望的。

指を咥えたまま週末が終わることを覚悟していると予定よりも仕事が早く進み頑張り次第ではどうにかなりそうな気配・・・

 

俄然やる気が出てきたので一気に片を付け午後からヤツガシラの観察に出掛けました。

 

 

現地に着くまで抜けずに居ることを願いましたが、情報を頂いての観察は『さっきまで居た』というのがよくある話。

 

無駄足覚悟でしたが今回確認された個体は随分とのんびりとした性格ということもあり、現地に到着すると噂通りの姿を見ることができました。

 

 

独特なフォルムをしているせいか、個人的なリストで一年に一度は見たい鳥となっています。

 

ヤツガシラの警戒心については個体差があるものの、過去の観察例を鑑みてもそれほど警戒心の強い鳥だと思いません。

 

しかし車は警戒しなくとも人の形を嫌うことが多かったので、この時も車内から観察を徹底しているとお構い無しにこちら側へ。

 

 

あっちに行ったりこっちに来たりと忙しなく採餌をしていましたが、その様子をじっくり観察していると餌となる生き物はクモが圧倒的に多いようでした。

 

採餌の方法については過去の日記で幾度となく記載していますが、地面に長い嘴を挿し込み捕らえた獲物を放り投げるようにして捕食します。

 

 

地面に嘴を挿し込む姿から改めて解説。

 

ヤツガシラは嘴を挿し込み易い場所を選び渡来するので、芝生、畑、土が露出した公園などで見られます。

時には民家の庭や軒先に渡来することもあり神出鬼没の鳥といった印象も。

 

 

この様に嘴の挿し込み易い土壌では奥深くまで挿し込み地中に潜む生き物を探します。

 

 

探り当てると獲物を咥えた状態で嘴を引き抜きますが、このまま食べることはありません。

 

 

例え小さな獲物でも一度地面に置いて何度か突っつき弱らせるようです。

 

静止画では伝わりませんがトントンと獲物を突っついている場面。

 

 

弱らせたところで嘴の先端部で獲物を摘まむように持ち上げると、真上に放り投げるようにして口の中へ。

 

 

獲物の8割がクモで次ぎに多いのは甲虫類の幼虫。

 

「そんなにクモって多いのか?」と思えるほど次々にクモを捕食するヤツガシラ。

 

 

南西諸島ではゴキブリを食べることが多いようで、可愛い顔に似合わず獲物とする生き物は女性が悲鳴をあげるようなものばかり。

 

活発に採餌する姿を暫く見ていると休憩に入ったのかパタッと動きが止まりました。

 

採餌をしている間は一心不乱という言葉が適当なほど周囲を気にせず行動していましたが、いざ休憩に入ると猛禽を警戒しているのか頻りに上空を見上げています。

 

 

見ているこちら側が猛禽に狙われないかと心配になる程おっとりとした雰囲気。

飛び方一つ取っても「本当に渡り鳥なのか?」と思わされるくらいの印象を受けます。

 

それもまたヤツガシラの魅力なのかもしれませんが、羽を休めているとウトウトとした様子だったので動画で撮影してみることに。

 

 

ウトウトしたのも束の間、ヤツガシラは思い出したように動き始めました。

 

再び採餌を始めたところにフキノトウが出ていたので春っぽい写真を。

 

 

もっと構図を考え色々撮らせてもらいたかったのですが、何を思ったのか道路を横断。

 

嘗てこれほどアスファルトが似合わない鳥を見たことがありません。

 

 

道路を渡ると小高くなった場所まで歩いて移動し再びのんびりとする時間が始まりました。

流石に先程の場所では気持ちが落ち着かなかったのでしょう。

 

 

暫く様子を伺っていると羽繕いを始めたので普段見られない羽の特徴をしっかりと観察。

 

 

初列風切に隠れがちな尾羽の横帯を見ることができた他、翼の内側も沢山見せてもらうことができました。

 

 

採餌をしていてもピントが合わないほど近寄ってくる場面もあり、随分とサービスの良い個体ですがサービスはまだまだ続きます。

 

 

羽繕いを終え再び道路に降りて来ると、今度は横断することなく道路脇のL型側溝に沿って歩き始めました。

 

何処に行くのかと思い、目で追っていると急に立ち止まり地面を凝視するような仕草。

不意に腰を下ろしたところで撮影を再開しましたが、今までに見たことのない動きで何が始まるのか分かりません。

 

 

突然体を伏せるような態勢になると羽をブルブルと震わせ砂埃を撒き散らせ始めました。

 

「砂浴びだ」

 

ヤツガシラはL型側溝にうっすら堆積した砂で砂浴びを始めたようです。

 

 

私がヤツガシラの砂浴びを見るのは初めて。

砂浴びを好む鳥だということは知っていましたが、なかなかチャンスに恵まれずこの様な形で観察できるとは思いもしませんでした。

 

もっと他に良さそうな場所がありそうなものの、この個体がヨシとして選んだ場所なので遠慮なく観察させてもらうことに。

 

 

砂浴び中に散らばった砂は嘴で自分の居場所に集めるような行動も見られ、体の向きを何度も変えて砂浴びをしていました。

 

 

砂浴びをする時間は長く観察を兼ねてシャッターを何度も押していましたが、思い出したように動画でも記録。

 

しかし録画を開始して間もなく、バイクの近寄ってくる音が・・・

タイミングの悪いことこの上ない。

 

ヤツガシラが警戒して飛び立つまでの短い動画になってしまいました。

 

 

動画の結末にある通り、バイクを警戒したヤツガシラは樹上に待避。

 

 

樹上では枝に嘴を擦り付け付着した泥を落とす様子が見られました。

 

ものの5分もすると地面に降りて再び採餌をする姿が見られ、夕暮れ時までヤツガシラの観察を堪能。

 

 

振り返ってみると休日出勤により残念な週末になるはずでしたが、情報を頂けたことと警戒心の無い個体のお陰で数年分の観察ができたと思います。

 

 

渡りのシーズンは始まったばかりということで、今後また良い出会いに期待して本日の観察日記はこれにておしまいです。