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2021年7月18日

 

 

 

 

今回の日記はコアジサシの観察記。

 

 

毎年欠かさず観察を行っているコアジサシですが、今季は観察の是非について迷いが生じていました。

 

理由は大きく二つあり、先ず始めに挙げられるのは例年と違った観察をしたいという思いでいる今季、日曜日のみ休暇の私にとって時間に余裕がありません。

せめて週休2日制であれば新たな発見があったり、より良い観察が出来ることでしょう。

 

しかしこればかりは仕方のないことであり、新しい環境での観察は何かを犠牲にする必要がありました。

 

 

次いで挙げられるのは度重なる繁殖の失敗。

 

昨年の観察では雛が短い翼をパタパタさせてジャンプをしている可愛い姿を見ることが出来ましたが、それから間もなく大雨の影響により命を落としました。

 

毎年この様な繰り返しで、私は未だ嘗て無事に成長した雛の姿を見た試しがありません。

 

 

健気に子育てをする親鳥とあどけない仕草を見せる可愛い雛を思うと、毎年悲しい結末が待っていることから「もうコアジサシの観察は辞めよう」という気持ちに・・・

 

昨年の観察から一年が経過し「そろそろ来ている頃かな」と思いつつも、やはり気持ちが前向きになれず観察の是非について暫く考えていました。

 

悩みに悩んだ結果、結局繁殖地を訪ねてしまいましたが繁殖場所となっている河川の中洲を見てみると雛を1羽確認。

 

 

川を隔てて雛の居る場所まではおよそ100mほど離れており観察は専ら双眼鏡で行っています。

距離が離れているため飛翔時以外に撮影した画像はかなり拡大しなければ何が写っているのか分からないような状態。

 

他にもう1~2羽の雛が居てもおかしくないはずですが、無精卵だったのか猛禽に狩られてしまったのか残念ながら雛は1羽のみの確認でした。

 

成鳥も2羽のみの確認で元々渡来数の少ない秋田県ですが、やはり度重なる繁殖の失敗が影響しているのか個体数は地域絶滅寸前、風前の灯火となっています。

 

 

暗澹たる気持ちでコアジサシの親子を眺めていると雛が翼をパタパタさせてジャンプをしていました。

 

 

とても可愛らしい姿ですが昨年の記憶が蘇ってしまいます。

 

雛は常時ゴミに寄り添うような形で親鳥からの給餌を待っているようでした。

この様にして天敵となる猛禽の目を逸らしているのでしょう。

 

 

雛が1羽だけのためか親鳥が狩りをする頻度は昨年より少なく、ボーッと中洲を眺めている時間がほとんど。

 

親鳥の飛び立ちを確認した瞬間カメラを構え撮影を行います。

 

 

今季ダイブを見せる場所はいずれもかなり距離が離れており、決定的瞬間は好条件で見ることができなかったことから獲物を咥えて戻る姿を撮影させてもらいました。

 

 

狩りを終えて給餌を済ませた親鳥が比較的距離の近い場所で水浴びを始めたので、この時ばかりは肉眼でも観察。

 

距離が離れているところに気温の上昇で陽炎の影響をモロに受けていたので、この時ばかりは清々しい気持ちに。

 

 

のんびりした雰囲気も束の間、親鳥が警戒する声を発し慌てて空を見上げると獲物を抱えたミサゴの姿が目に入りました。

 

コアジサシにとって脅威となる猛禽ではありませんが、繁殖場所には近付いて欲しくないようです。

 

 

ミサゴにとっては何故追い回されるのか訳が分からないかもしれません。

 

執拗に追い掛けられたせいか私の直ぐそばを通過していきました。

 

 

一難去ってまた一難。

今度はカラスが現れると親鳥の威嚇に怯むことなく繁殖場所の中洲へ着陸。

 

これには流石の親鳥も最大の警戒心を見せ2羽で排除を試みます。

 

 

何度も急降下を繰り返しますが、コアジサシには直接的なダメージを与える程の攻撃力を持ち合わせていません。

 

 

あくまでも威嚇に留まりますが相当な勢いで急降下を見せる為、驚いたカラスはバランスを崩しひっくり返っていました。

 

 

何とかカラスを追い払うと親鳥の1羽は雛の元へ。

もう1羽の親鳥は雛へ給餌する為そのまま狩りを始めたようです。

 

 

この日を境に毎日天気予報をチェックするようになりましたが、小笠原諸島近海を北上した台風5号の影響により梅雨前線の活動が活発になり大雨の予報がなされました。

 

晴天が毎日続いていたとしても一度の大雨で全て水の泡となってしまいます。

 

 

最初の観察から一週間が経ち、本県への台風の影響はフェーン現象をもたらしただけで済み予報は大きく変わって晴天が続きました。

 

雛が無事に成長しているのか気になり再び繁殖地へ足を運んでみると、強い陽射しを避けるようにしてゴミ袋の陰に隠れている姿を確認。

 

 

おそらく河原の石はかなりの高温になっていることでしょう。

暑そうに口を開いている様子が見て取れました。

 

親鳥が狩りに出ている間はゴミ袋をシェルターとして身を守り、親鳥が戻ると安心して出て来るようです。

 

 

一週間前に比べると体つきが少しスマートになり、羽もだいぶ伸長しているようでした。

 

この時も翼をはためかせてジャンプ。

 

 

雛の成長が順調であることにホッと一安心でしたが、その様な気持ちと裏腹に心配な出来事が・・・

 

親鳥の1羽がどうしても見当たりません。

 

 

同時に2羽確認できるタイミングが無く、中洲を丁寧にチェックしてみたもののもう1羽が確認できず嫌な予感がし始めました。

 

決定的だったことが中洲へ近付いたトビを追い払う時も飛び上がったのは雛のそばに居た親鳥のみ。

 

 

結局この日は片親しか確認できず。

もう1羽は遠洋漁業に出掛けているだけだと信じたい、そう思いながらこの日の観察を終えました。

 

 

この日以降も連日のように天気予報を細かくチェック。

本県は梅雨入り後まとまった雨量は観測されず、暫く安定した空模様が続きました。

 

このまま好天が続き、雛が無事に成長すると初めて巣立った姿を見ることが出来そうです。

 

 

最初の観察から2週間が経過。

早朝から繁殖地を訪ね親鳥と雛を探してみますが簡単には見つかりません。

 

前述した通り繁殖場所となっている中洲までは距離が離れているため肉眼での捜索は困難。

 

親鳥の飛び立つ姿を確認できれば雛の居場所も手っ取り早く確認することができるため暫く様子を伺っていると河岸の近くで何かが動いていることに気が付きました。

 

双眼鏡で確認してみたところ雛であることが判明。

早速その様子を撮影してみました。

 

 

望遠レンズで撮影してもこの程度。

この画像に写っている雛をクローズアップしてみます。

 

 

動くことで雛の所在を知ることが出来ましたが、伏せた姿勢で居られると石と同化してしまい全く分かりません。

 

よく見てみると少し離れた場所に親鳥が羽を休めており、河岸ギリギリの場所に移動して暫し観察を続けてみることにしました。

 

雛を眺めていると不意に鳴き声を発し餌をねだるような様子が見られ、間もなく魚を咥えた親鳥が飛来。

 

 

魚を受け取った雛は一瞬で飲み込んでしまいます。

 

 

給餌を済ませた親鳥は狩りをする為に再び飛び立ちましたが、雛の近くで羽を休めていた親鳥は依然として同じ場所に。

 

前週の観察では片親の安否が不明のままで気を揉んでいたものの、どうやら私の目が耄碌していただけのようでホッと一安心。

 

2回、3回と立て続けに親鳥から給餌を受ける雛でしたが、体つきは前週に比べると更にスマートになり羽の伸長も著しく親鳥と同じようなサイズに成長していることが見て取れました。

 

 

一端給餌タイムが終わったようで狩りをしていた親鳥も羽を休めると雛は河岸へ。

「水浴びを始めるのだろうか?」と思い行動に注視していると、水面を見つめるような仕草。

 

間もなく水面を突っつくような行動を見せました。

 

 

河岸にはメダカサイズの稚魚が沢山泳いでいたことから、もしかすると魚を捕ろうとしていたのかもしれません。

 

あくまでも私の憶測に過ぎませんが、そうだとするとコアジサシにとって本能的な行動となるのでしょうか。

 

河岸を行ったり来たりする雛を見ていると伸びのポーズを見せました。

 

 

こちらの画像から羽の伸長具合いがよく分かります。

 

コアジサシの雛が飛べるようになるまで調べてみたところ、およそ3週間ほどで飛べることを知りました。

 

 

最初の観察の時点では生後3~4日だった思います。

 

この日の観察から逆算すると雛は生後17~18日であることから自由に飛べるようになるまではあと僅かでしょう。

 

「無事に飛ぶ姿を見ることができたらいいな」と思った矢先・・・

 

雛が飛んだ。

 

 

飛んだといってもほんの数mですが、今まで見せていたジャンプではなく明らかに水平飛行を見せました。

 

 

観察を続けて良かったと思わされる一幕。

 

無事に成長する姿を見たい一心で暑さに耐えながら何年も観察を続けてきましたが、度重なる繁殖の失敗で一度は心が折れてしまったものの今までの苦労が報われた瞬間でした。

 

この日の観察から梅雨らしいぐずついた天候の日もあり先週は大雨の影響で河川の氾濫も心配しましたが、幸い飛べるようになってから一週間が経過していたので今頃は自由に空を飛び回っていることでしょう。

 

 

無事に巣立つことができたとは云え、間もなく渡りのシーズンを迎え秋田を離れます。

 

未だ見ぬ越冬地に辿り着くまで幾多の困難が待ち受けていると思いますが、また来年元気な姿を見せてくれることを願っています。

 

 

少々長くなってしまいましたが今季のコアジサシ観察記はこの辺でおしまい。