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2021年7月4日

 

 

 

 

今回の日記はノジコの観察記。

 

夏鳥の観察が本格的になり毎週末様々な環境で観察を行っていますが、今回話題として取り上げるのは世界を見ても日本でのみ繁殖をしているノジコ。

 

手持ちの図鑑で確認してみたところ分布域は本州北部という記載がありましたが図鑑によっては本州北部~中部と記載しているものもあるようです。

 

当該する地域であっても局所的に見られる希少な鳥であることから、繁殖地となっている秋田県内においても意識的に探さなければ見ることができません。

 

 

そんなノジコが我が家から程近い場所で繁殖をしており、密度としても他地域と比べて類を見ないほど。

 

そちらに足を運ぶと四方八方からノジコの囀りが聞こえてきます。

 

 

高密度に生息していますが各々に縄張りを持ち、互いの縄張りが重ならないよう一定程度の間隔を保っているようです。

 

生息環境としては特に沢沿いや湿地周辺に自生するハンノキなどの低木林を好むようで今回は生息環境も何枚か撮影してみました。

 

 

湿地帯に低木が疎らに生えており、この様な場所に止まる姿をよく見かけます。

 

しかし体色と同じような葉っぱの陰に止まることが多く、囀りが聞こえてきても姿が見えないということも屡々。

 

 

杉の木が多い場所では梢に止まり囀ずっている姿を目にしますが、高い場所だけに光線の状態によっては真っ黒に見えてしまい観察は困難。

 

生息環境について話を戻しますがこちらの環境は低地であり、図鑑に記載があるような生息環境とは異なるかもしれません。

 

 

図鑑では山地で繁殖するとありますが、この場所は田んぼも広がりサシバが繁殖するような里山的環境です。

 

道路沿いには電柱が立ち並び、こちらがソングポストとなっており今回の観察でも電線に止まって囀ずる個体を複数見ることが出来ました。

 

 

この様に目立った場所に居てくれると一目瞭然ですが、前述した通りパッと見た目には分からない場所に居ることが多く双眼鏡を用いて丁寧に探さなければ姿を見ることが出来ません。

 

また警戒心もそこそこ強く、比較的近い距離に居る場合は人の気配を嫌がります。

 

 

そのため観察・撮影は全て車内から行いました。

 

スコープがあれば離れた場所からゆっくりと観察できるかもしれませんが、忙しなく動き回ることが多く、葉の陰に隠れることも多いことから車内からの観察がベストになるでしょう。

 

 

抜けの良いところに出てきた時ほど警戒心が強いと感じます。

 

警戒心については渡りの季節・繁殖前・育雛中と時期によって異なるかもしれませんが、他地域で撮影された画像を拝見するとこちらとは見ることの無い場所に止まっていることから地域性の違いもあるかもしれません。

 

 

囀りは美しく音程は高めで張りのある声を聞かせてくれます。

 

この日は同じ場所でホオジロとホオアカも同時に囀ずる場面があり、混声3部合唱を聞くことができました。

 

 

初めて合唱を聞いた感想としては綺麗ではありましたが、あまりにも複雑に聞こえ何が何だか・・・

 

囀りの美しさだけではなく見た目も鮮やかな黄色であることから写真だけ見ると夏空に映え、爽やかなイメージさえ感じますが観察する側は過酷の一言。

 

繁殖地でのノジコの観察は修行と云ってもいいでしょう。

 

 

繁殖地は高温多湿で蒸し風呂状態。

 

近い距離で見ることが出来ても空気が揺らいでしまうため今一つピントが合わず、陽の向きによっては露出も難しくなってしまいます。

 

 

この日この場所の気温は33℃を記録。

直射を受けた葉っぱはギラギラと光りノジコも暑そうに口を開いていました。

 

私も額から滴る汗を拭いながらの観察で茹でられているような思い。

 

我に返って考えると休暇であるはずの日曜日が一番辛く感じ、観察の辛い季節が到来したことを実感させられます。

 

 

過酷な環境下で観察を続けていて、唯一いつもと違った場面を見ることが出来たのは虫を捕食するシーン。

 

偶然近くに来た個体がこの場面を見せてくれました。

 

 

低木を行ったり来たりする個体が見られそちらは育雛中であることが伺えましたが、その他の個体をよく見てみると腹部が一部露出していたり羽毛が凹んでいる個体が多く、ほとんどの個体が抱卵中であることを示しています。

 

ノジコは雌雄交代で抱卵を行うため、電線に止まり囀りを聞かせる雄も抱卵をしていた痕跡が見られました。

 

 

抱卵期間は約2週間ほどであることから間もなく育雛のため忙しなく動き回る親鳥の姿が見られることでしょう。

 

今回の観察を通しても、この希少な鳥を自宅近くで容易に観察出来ることは本当に贅沢なことだと感じました。

 

 

新たな命が誕生することで次の世代に受け継がれたDNAがまたこの場所で繁殖を繰り返します。

 

断片的な観察はいいとこどりで繁殖の難しさやを垣間見ることは出来ませんが、今後もこの場所を故郷としてしてくれる個体が絶えないことを願って止みません。

 

 

先ずは今季も順調に繁殖してくれることを願って本日の観察日記はここまでにしたいと思います。

 

おしまい。