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2022年1月10日

 

 

 

 

今回の日記は先月25日の観察分から。

 

12月は中旬頃から週末毎に寒波が襲来し、クリスマスは数年に一度と言われる強い寒波に覆われました。

 

全国的に見ると普段雪の少ない地域でも大雪に見舞われ災害レベルと報道されていましたが本県は風の影響が強く、吹き溜まりによる交通障害が多く発生していたようです。

 

 

この日は風が強いことで雲の流れも早く雪が降ったり止んだりを繰り返し時にはホワイトアウトすることも。

視界が奪われる状態に外出を躊躇する天候でしたが、この日は所用の為どうしても家を出なければなりませんでした。

 

どうせ家を出るなら念の為にと撮影機材を積んで自宅を出発。

 

準備はしたものの観察の可否について悩まされる天候でしたが、思いのほか早く所用を済ませることができたのでダメ元で観察地の様子を見てみることに。

 

 

初めに赴いたのはワシのなる木。

この時はオオワシ成鳥1羽、オジロワシ亜成鳥1羽と幼鳥1羽の計3羽が羽を休めていました。

 

 

雪の止み間を狙って撮影しましたが、直ぐに吹雪いてきたため車の中で待機しているとオオワシが飛翔。

 

 

周囲を旋回すると再び所定の位置へ。

この時に撮影したものが年末の総集編で使用した画像です。

 

 

約1ヶ月ぶりに元気な姿を見ることができたところで場所を移動したところ、強風に煽られながらも懸命に飛んでいる小鳥を目にしました。

 

耐えかねたように葦原へ降りたので車を寄せて確認してみたところ目の当たりにしている鳥の同定ができず。

 

 

大方、ホオジロまたはオオジュリンと想像していましたが脳内図鑑と合致する鳥が思い浮かびません。

 

強いて言えばコホオアカのようにも見えますが、私が記憶するコホオアカとは特徴が異なりました。

コホオアカであれば胸に褐色みを帯びませんし、腹まで縦斑が明瞭に伸びるはずです。

 

 

また顔はもっと赤ら顔をしているはずですが、目の前にしている個体はぼんやりとした印象。

更に言うと体長もコホオアカに比べ大きく見えましたが種の同定が出来ないまま謎の小鳥は目の届かない位置へ飛び去ってしまいました。

 

 

悶々としながらもフィールドを巡回。

 

吹雪のなかオジロワシが何か捕食しているようだったので撮影した画像を拡大してみたところ獲物は魚と判明。

 

飲み込む寸前のカットでは尾びれを見ることができました。

 

 

この後はハクガンの群れが見られる場所を回ってみましたが、この数日間で積雪量が増えたことに加えて吹き溜まりになっている場所も多く思うように移動することができず..

 

また突然のホワイトアウトで身動きが取れなくなることも。

 

 

遠巻きながらも群れを探してみるとあちこちに分散していることが伺えました。

 

大きな吹き溜まりで立ち入ることが出来ない場所を除き、可能な範囲で巡回してみたところヒシクイの群れに混ざる100羽程のハクガンを発見。

 

 

パッと見た目にヒシクイしか写ってないようにも見えますが画像を拡大するとご覧の通り。

 

 

この時期のハクガンは雪に同化することで見落としてしまうことも屡々。

渡来当初の雪が無い頃に比べると観察難易度は格段に跳ね上がります。

 

どうせならば更に分かり難い状態の群れを探そうと思い当たる滞在場所を転々としてみるとハクガンだけの群れを見つけることができました。

 

 

過酷な環境で暮らすありのままの姿を写真に残そうと、敢えて天候が悪化するまで待ってみることに。

 

氷点下の気温と強風の影響も手伝って体感温度は極寒。

指の感覚も無くなりただひたすら耐える時間が続いていたところお待ちかねの猛烈な吹雪。

 

地吹雪も加わってホワイト&ホワイト。

 

 

イメージ通りの画像にはなりませんでしたが、厳しい環境で暮らす様子が少しでも伝われば寒さに耐えて観察した私の苦労も報われます。

 

 

我慢の限界で車へ戻ろうとしたところ動くはずのない土の塊が動いているように見えました。

目の錯覚かと思いましたが確かに何かが動いているようで、目を凝らしてみたところそこに居たのはコミミズク。

 

しかも付近にもう1羽居ることに気が付きましたが、ハクガンを見ていたことで寒さの限界。

一度車に戻り吹雪が収まるまで車内から観察してみることに。

 

 

土の塊の陰で吹雪に耐えていたのかコミミズクの顔が雪にまみれていました。

 

 

風の向きによって居場所を変えることもあり、別角度から見てみたところ瞼まで凍っていることが見て取れます。

 

 

猛烈な地吹雪が加わると大きな土の塊の陰まで歩いて移動し吹雪に堪え忍ぶ時間が続きました。

 

そちらの様子は動画でも記録しましたが、和名の由来ともなっている小さな羽角を立て周囲を警戒している様子を見ることができます。

 

 

コミミズクは触れるような距離まで近付くこともできますが、羽角を立てて警戒心が強まっている時に近付くことはできません。

 

私がハクガンの観察をしている間、他の猛禽が現れていたのか警戒心の強い状態は終始続きました。

 

もう1羽のコミミズクは落ち着きがなく、飛んでは降りての繰り返し。

 

 

見ている側からすると色んな場面を見られるだけに有難いと思う反面、接写できない歯痒さと葛藤の繰り返しでした。

 

 

土の塊の上に降りたところで少し落ち着いたようだったのでローアングルで撮影してみることに。

 

 

まだ羽角が立っており、これ以上は近付けません。

 

結果として日没近くまで観察することができたものの観察の内容としては代り映えのするものは無く、単純に撮影しただけの内容となってしまいました。

 

とは言っても棚から牡丹餅のようにコミミズクを見ることができたことを考えると『欲張り過ぎ』と言われるような気もします。

 

 

現在は雪に閉ざされたフィールドでどの様にして暮らしているのでしょうか。

 

 

春までにまた観察の機会が巡ってくることを期待してこの日の観察を終えましたが、コミミズクを観察しながらも気になっていたのは同定に至らなかった謎の小鳥。

 

帰宅後に手持ちの図鑑を開いてみましたが、やはり該当するような種が見当たりません。

 

コホオアカに関しても渡りの時期に観察するだけで、真冬になると今回見たような変化があるものなのかとWeb上でも調べてみましたが納得のいく答えを見出だすことは出来ませんでした。

 

 

この様な経緯から隣県の離島を中心に長年観察している先輩に以下の画像を見て頂くことに。

 

 

早速回答の返信を頂きましたが、今回は先輩の許可を得た上で見解を引用させて戴きます。

 

 

 

『第一印象はホオアカ冬羽です。あくまで添付画像1枚からの判断です。

わずかに頭側線が前半のみあるように見え、一見これがホオアカ的ではない印象になるカモしれませんが耳羽後方の暗色の縁取りがありません。

加えて頭部がほぼ灰色なこと、胸と脇腹が褐色みを帯びていること、そしてそれらを含めた全体的な印象、特に顔つきがホオアカですね。

コホオアカなら抽象的な表現になりますが、もっとかわいい印象になると思います。

 

ホオアカの最小個体とコホオアカの最大個体は数値上でもオーバーラップはなく、かなり大きいと感じるコホオアカでもホオアカほどまでは大きいと感じたことはないですね。

その辺り、大きさはどんな感じだったでしょうか?』

 

 

 

目から鱗、そして溜飲の下がる思いでした。

 

本県においてホオアカは夏鳥として見られる為この時期に目にしたことはありません。

その様な理由と先入観も手伝ってホオアカを除外してしまったことが同定に至らなかった原因です。

 

冬羽が図鑑に載っていなかったとはいえ、夏羽の特徴を思い出すと僅かながらも今回目にした個体と似ていました。

 

お礼の返信を送ったところ先輩から更にこの様な返信を頂きました。

 

 

 

『われわれ東北の日本海側に住む身としては、ホオアカの冬羽などド珍鳥なので致し方ないと思います。コホオアカより珍しいと思いますね。

 

越冬コホオアカを宮城や福島で見たことはあります。いずれもカシラダカと一緒でした。少なからず本土でも越冬してるんでしょうね。

 

また、一度、別の鳥に見えてしまうと、何故か、それ意外には全く見えなくなるもんですよね。よくやります、私も(笑)』

 

 

 

初めて見た冬羽のホオアカ、本当に勉強になりました。

 

季節外れの鳥が見つかるのも世界規模の気候変動が影響しているのか分かりませんが、今回の経験を糧として更に観察眼を鍛えたいと思います。

 

本日の観察日記はここまで。