2022年1月31日
今回の日記は今月3日の観察分から。
この日は比較的穏やかな天候に恵まれ普段であれば意気揚々と観察に出掛けるところですが、今季は鳥が少ない状態が依然として続いているため観察場所がなかなか定まらず..
行き当たりばったりの観察もフィールドが雪に閉ざされていることから思うようにいきません。
結局のところ海沿いを回る他なく漁港を転々とし目についたのはシノリガモでした。
漁港内で何度も潜水する様子を眺めていたところ、浮上するタイミングでセグロカモメが度々接近。
シノリガモが浮上すると緑色の物体を咥えており、始めは海藻かと思っていましたがセグロカモメが餌を横取りしようとしていました。
「セグロカモメが海藻を食べるか?」と不思議に思い双眼鏡で確認してみたところ、シノリガモが咥えていた物体はブリコ(ハタハタの卵)と判明。
道理でセグロカモメが執着する訳だと納得できましたが、同時にシノリガモがブリコを食べることに驚きを感じました。
今まで幾度となくシノリガモを観察してきたもののブリコを食べる姿を見るのは初めて。
考えてみると潜水ガモであるシノリガモがブリコを採るのはお誂え向きといったところでしょうか。
ハタハタは海藻に絡み付けるように産卵するためシノリガモにとっては格好の餌となるはずです。
しかしハタハタの卵はゴルフボールくらいの大きさであることから浮上した後には首を激しく振って細かくする様子が見られました。
おちょぼ口のシノリガモにとっては採れたてのブリコは大き過ぎるのでしょう。
適当なサイズになるまで何度も振り回し小さくなったところで飲み込みます。
秋田県民にとってハタハタは馴染み深い魚であり、私自身子供の頃にはブリコをよく食べたものでした。
非常に歯応えがあり、噛むと『ボリッ ボリッ』と音が響くほど。
秋田県の県魚とされるハタハタも近年は記録的な不漁が続き食卓に並ぶことも少なくなったように感じます。
その影響もあるのか冬季に見るカモメ類は激減してしまいました。
ほんの数年前までは万単位のカモメ類が漁港を埋め尽くし、荒波に揉まれ打ち上げられたブリコを食べる姿が当たり前に見られていましたが現在は数えるほどしか見られません。
これも気候変動が及ぼす影響の一つなのでしょうか。
画像は以前撮影したブリコを食べるウミネコ。
当たり前に見られていたものが当たり前でなくなるというのは非常に寂しく思います。
シノリガモの観察を終えて探してみたのはカヤクグリの越冬個体。
実は前日(2日)の観察でも探してみたのですが気配すら感じられず今季は見られないものと判断していました。
しかしながら時間を持て余していたこの日、他に行く当てもなかったことから執念深く探してみることに。
探し始めて一時間ほど経った頃「チリリリ」という地鳴きを確認。
頻繁に鳴くことはなく捜索には手こずりましたが鳴き声の出所を探ることで姿を見ることができました。
岩場を器用に伝い歩くカヤクグリ。
イワヒバリと同様に亜高山帯以上の山地で暮らす鳥とあって、こうした岩場を移動するのはお手の物といった様子です。
傾斜の緩い場所には落ち葉が積もっており、こちらでは大型ツグミ類を思わせるような行動を目撃。
落ち葉をひっくり返したり嘴で跳ね除けたりと、落ち葉の下に潜む生物を探す姿が見られました。
採餌の様子を観察していたところ急に上空を気にする場面があり、猛禽でも飛んでいるのかと見上げてみたところ案の定ハヤブサの姿が。
人に対する警戒心は緩いものの猛禽に対しては敏感に反応していました。
忙しく岩場を移動していたカヤクグリは採餌を終えるとお立ち台の上へ。
かなり大胆な行動に出ましたが喜びも束の間、藪の中へ姿を消してしまいました。
暫く動向を確認できない時間が続き今回の観察はここまでかと思った頃、地面に同化するようにして採餌するカヤクグリを発見。
この個体が岩場で採餌をしていた個体と同個体であるかは分かりません。
前季もこの周辺で複数の個体が越冬していることを確認できていたことから今季も複数の個体が越冬している可能性は十分にあるでしょう。
また行動のパターンに関しても前季と同じ傾向にあり、同個体がこの場所に移動してきたものと推察できます。
日を改めて観察することができればと思いますが昨季の例を考えると雪の量によって行動パターンが変わることもあるため、再び観察をするにはある程度の運も必要です。
出来ることであればこの場所でイワヒバリの越冬個体も観察したいと思うのですが願いは叶うのか..
また次回も良い出会いに恵まれることを期待して本日の観察日記はこれにておしまいです。