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2023年12月27日

 

 

 

本日更新する日記は前回記事(12月25日付)の続編です。

 

11月23~26日の4連休は3泊4日の日程で石垣島の旅を計画していましたが、出発を目前に控え急遽旅行をキャンセル。

 

私を思い留まらせたのは地元の観察にありました。

 

渡り鳥の観察が好調だったこの秋。

地元の観察を休止してまで今は旅行するべきではないと判断。

 

当初の計画を大幅に変更してこの4日間は男鹿半島を中心に探鳥を重ねましたが、23日はユキホオジロの観察から始まり柿の木へ飛来する様々な鳥を観察。

 

24日は過去に例のないシベリアジュリンの群れを観察し、ハギマシコの群れも見ることができました。

 

 

ここまでが前回のあらすじ。

 

 

25日は強い寒気に覆われたことにより冬本番の寒さに。

自宅周辺は一晩のうちに雪が積もり、朝起きて外の様子を見てみると銀世界の景色に変わっていました。

 

更にこの日は暴風雪警報が発令されるほどの悪天候。

常識的な感覚では外出を控えることが正しい判断となるでしょう。

 

しかしそこは頭のネジが外れた鳥屋。

渡り鳥が避難しているかもしれないと嬉々としながら男鹿半島を目指しました。

 

この日はじめに見たのは滞在中のユキホオジロ。

 

 

暴風の影響により雲の流れが早く時々陽射しが届きます。

 

晴れたと思えば急に吹雪いてきたりと目まぐるしく変わる空模様。

 

 

秋田では雪が降るなかユキホオジロを見る機会は珍しく、ここぞとばかりに撮影していました。

 

暴風に煽られながらも懸命に採餌していましたが、突風に吹かれると草陰へ身を隠し耐え忍ぶ姿は野に生きる者の知恵と逞しさを感じます。

 

 

前日見られた複数のシベリアジュリンも同様でしたが、近隣の定番スポットへ移動してみるとあまりにも風が強すぎた為か鳥の姿は確認できず。

 

ドアを開けると両手でも閉めることができないほどの暴風でした。

 

こうした天候だからこそ何か見られるはずと暫く待機してみたところ10羽ほどのハギマシコが飛来。

 

 

地べたを這いつくばるように採餌するハギマシコたち。

 

おそらく暴風の影響により崖に止まっての採餌はできなかったのでしょう。

 

 

何度か飛び立つ場面があり、その度に付近のブッシュへ潜り込む様子が見られました。

 

 

ブッシュの中で耐え忍びタイミングを見計らって採餌を繰り返していたものと考えますが、観察を始めて30分ほど経過した頃に50羽ほどの群れが飛来。

 

 

60羽に膨らんだ群れの全景はズームレンズでなければ収めることはできません。

この時は更に風が強くなり車が激しく揺れるためピント合わせも困難な状況に。

 

それでもハギマシコたちは懸命に採餌を続け、その姿を間近に見る場面もありました。

 

 

こうした様子を暫く観察していると一斉に飛び立った群れは二手に分散。

 

一方の群れは遥か彼方へ、もう片方の群れは付近のブッシュへ潜りましたが、再び姿を見せるだろうと予想しその場で待機することに。

 

しかし待てど暮らせど姿を見せず...

 

もう少しハギマシコを観察したいというのが正直な気持ちでしたが、それなりに観察できていた部分もあり新たな出会いを求めてこの場を離れることに。

 

 

探鳥を始めて間もなく、道路脇を這うように移動する怪しげな鳥を発見。

双眼鏡を覗き確認作業にあたったところツメナガホオジロであることが判明しました。

 

今まで見た個体のなかでも最も夏羽の特徴を残す個体です。

先ずは証拠写真と思いましたが、撮影する間もなく飛び立ってしまったツメナガホオジロ。

 

これには落胆の色を隠せませんでしたが、幸いにも遠くへ飛ぶことはなく再びその姿を確認。

 

慎重に車を動かし証拠写真の撮影から。

 

 

こちらの写真は存在が分かっていたからこそ撮れたものですが、実際の見た目には鳥が居ることすら分かりません。

 

絶妙なまでの保護色であるため余程注意して見ない限り飛ばれて気付くことがほとんどでしょう。

 

 

道路脇で採餌するツメナガホオジロは奥へ奥へと進み、離れては距離を詰めての繰り返し。

観察というよりも単に証拠写真を撮っているだけの時間が続きました。

 

 

こうした作業を繰り返すことにより極端な警戒心を見せる個体ではないと分かりましたが、飛ばしてしまうことが怖くあと少しの距離に踏み込むことができません。

 

 

移動を繰り返すツメナガホオジロが間もなく大きな通りへ差し掛かろうとしたその時、暴風に煽られるようにして一瞬で姿を消してしまいました。

 

観察は一気に振り出しに戻され見失ったツメナガホオジロの捜索にあたりましたが、問屋は易々と卸してくれません。

 

 

目を皿にして探し回ったものの気配すら感じられず再発見を諦めかけた頃、私たちの目の前に姿を見せたのは1羽のハギマシコ。

 

その距離僅か数十cmという至近距離。

あまりの近さに窓さえ開けることができずスマホで撮影しました。

 

 

こちらの個体が回り込んだタイミングで動画を撮影。

 

どんどん近寄ってくる様子を見ることができます。

 

 

暴風の影響により形振り構わずといった状況だったのか、警戒心の無い個体だったのか近寄ってきた理由については分かりません。

 

理由は別として目の前で採餌するハギマシコを存分に見ることができ、これには友人も興奮気味でした。

 

思いがけず良い場面に遭遇しましたが、本命のツメナガホオジロは何処に...

 

 

依然として採餌を続けるハギマシコに別れを告げ、再びツメナガホオジロの捜索に当たりましたが広大な敷地のなかから1羽の小鳥を探し出すのは至難の業。

 

最早これまでと諦めの境地へ陥った頃、遥か前方の道路脇で一瞬何かが動いたように見えました。

 

直ぐに停車し双眼鏡を覗いたところツメナガホオジロであると分かり狂喜乱舞。

抜群の保護色を見せるこの鳥を走行中によく見つけたと自画自賛していました。

 

 

この時の再発見も含め、この日の出会いの多くは暴風雪という悪天候がもたらしてくれたと言っても過言ではありません。

 

仮にこの日が好天であったなら往来する車に飛ばされ出会いの少なかった一日となっていたことでしょう。

 

 

悪天候を逆手に取り、良い出会いに恵まれた一日でした。

 

 

連休最終日となった26日も懲りることなく男鹿半島へ。

 

何か一つでも発見があれば御の字ですが、気掛かりだったのは前日と比べ物にならないほどの穏やかな天候。

足止めを食らった鳥たちが移動してもおかしくはありません。

 

懸念材料を抱えたまま定番ポイントを覗いてみると意外にもユキホオジロとシベリアジュリンは健在でした。

 

 

ほんの少し両種を眺めた後は「未だ見ぬ珍鳥を」と鼻息荒く方々探してみたものの尽く空振り...

 

この日は観光客や釣り人の往来も多くなり、珍鳥探しをするには条件が良いと言えませんでした。

 

結果的に良い出会いに恵まれることはなく残された時間をどの様に過ごすか思案。

 

ここで友人より『ユキホオジロをこんなに良い条件で見るのはこの先無いかもしれない』という発言があり、時間の許す限りユキホオジロを観察することに。

 

 

連日のように観察したユキホオジロですが考えてみると何とも贅沢な話。

 

バードウォッチングを始めるにあたり誰しも手にするのは野鳥図鑑。

初めて手にした図鑑には見分けのつかない鳥が沢山掲載されています。

 

事実、この私も初めて図鑑を手にした頃は野鳥の会の方々が図鑑を見ずに同定する様を見て「何故分かる?神か!?」と思ったこともありました。

 

誰しも通る道ですが、図鑑を眺めて憧れる鳥の一つにこのユキホオジロが挙げられるでしょう。

 

 

可愛らしい容姿からユキホオジロ見たさに北海道へ遠征される方も多いのではないでしょうか。

 

現在ほど情報化社会でなかった2010年、千葉県にユキホオジロが現れた際には数百人のバードウォッチャーが集まったと聞きます。

 

今では珍しい話ではありませんが、この時代にSNSが普及していたならバードウォッチャーの数は桁違いになっていたことでしょう。

 

 

それほど人気を誇るユキホオジロですが、この時観察していたのは私たちだけ。

正に一人占め状態です。

 

 

と思ったのも束の間。

 

突然見知らぬ車に横付けされ『何かいるんですか?』と尋ねてきたのはバードウォッチャーと思わしき人物。

 

反射的に「いえ、何も...」と答えた瞬間、草陰に隠れていたユキホオジロが勢いよく飛び出てきました。

 

『あー!』と声を挙げてユキホオジロを指差すバードウォッチャー。

よく見るとレンタカーナンバーの車でした。

 

 

「嘘ついてごめんなさい」

 

 

県外のバードウォッチャーはユキホオジロに釘付けになっているようでしたが、ここで時刻を確認すると男鹿半島を離れなければならない時間になっていました。

 

友人を送るため男鹿半島を南下すると道中にはウソとベニマシコが見られ少しだけ観察。

 


 

こうして男鹿半島での探鳥を終えましたが、振り返ってみると充実の4日間。

 

計画通りであれば石垣島で暖かく過ごしてるはずでしたが、寒さに震える秋田だからこその出会いがありました。

 

 

結果的に吉と出た今回の判断。

毎度のことながら運を味方につけての探鳥になりましたが、凶の結果とは紙一重だけに今後このような危険を措かすことはないでしょう。

 

 

観察日記としては今回の記事が本年最後。

30日には今年一年を振り返る総集編を更新します。