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2024年6月17日

 

 

 

本日更新の日記は5月19日の観察から。

 

この日の二日前、強い寒気を伴った低気圧が日本海を進み秋田県は大荒れの天候に見舞われました。

台風並みの暴風が吹き荒れ、秋田沖を通過する渡り鳥にとっては災難だったことでしょう。

 

こうした天候の後には思わぬ出会いに恵まれることが多く、天気が荒れるほど喜ぶのは頭のネジが外れたバードウォッチャー。

 

バードウォッチャーを揶揄するような言い回しになりましたが当の本人が最たる例。

 

通常、離島でしか見ることのできないような鳥が避難していることを想定してお宝探しに出掛けてみると...

 

 

期待するような鳥は発見ならず。

珍鳥どころか普通種すらまともに観察できませんでした。

 

 

滅多にないチャンスを活かすことができなかっただけに落胆の色を隠せずにいましたが、お宝探しの後は元々予定していたコシアカツバメの観察へ行ってみることに。

 

 

繁殖地へ着いて驚かされたのは今季の渡来数。

あちこち飛び交っていたため正確性には欠けますが70~80羽ほどの個体を見ることができました。

渡来当初の数としては過去最高です。

 

年々個体数を増やしていましたが、今後大幅に増えるかもしれません。

 

 

順調に繁殖が進み更に個体数を増やした場合、繁殖場所は他方へ分散する可能性もあるでしょう。

 

 

この日は陽射しがありながらも薄雲が広がるお天気であったため写真としては残念なものになってしまいましたが、今後繁殖がどのように推移するのか継続して観察を行いたいと思います。

 

 

コシアカツバメの観察を終えて帰宅を考えましたが、帰るにはまだ早いと自宅近くの田んぼを回ってみることに。

 

 

場所を転々としながら様子を見てみたものの確認できたのはヒバリ・コチドリ・アオサギなど...

 

私が野鳥観察を始めた頃は自宅近くでもシギチが見られ、季節毎の楽しみもありましたが近年はさっぱり見られなくなってしまいました。

 

辛うじて観察できるのは海岸のみ。

淡水域では確認すらできなくなった状況に肩を落とし帰宅しようと思った矢先の出来事。

 

 

低気圧の置き土産を発見。

 

思わず二度見してしまったのはソリハシセイタカシギ。

 

 

まさか自宅近くで見られるとは思っておらず流石に想定外。

 

九州・沖縄方面では数えきれないほどの個体を観察してきましたが、本県で見ることができたのは今回が二回目。

 

それも自宅近くでの発見とあって喜びは一入です。

 

 

首を左右に振りながら一心不乱に採餌するソリハシセイタカシギ。

 

突然立ち止まるとブルブル身を振るわせ伸びの姿勢を見せました。

 

 

本県でも観察例が多くなりつつあり今季は北海道でも確認されていたそうです。

 

嘗ては国内において大変珍しい鳥とされていましたが、近年は全国各地で見られるようになり特に九州・沖縄では当たり前のように見られるようになりました。

 

 

冒頭でもお話した通り、おそらくこちらの個体は二日前の嵐から避難してきたのでしょう。

 

これといって怪我をしている様子もなく採餌する姿もこれまでに観察してきた個体と何ら変わった様子は見られなかったことから、天候が回復するまで一時的な滞在だったのではないでしょうか。

 

 

特に私を気にする様子もなく黙々と採餌していましたが、農家さんが歩み寄ると流石に距離を置こうとする素振りを見せました。

 

 

こうした時に挨拶は必要不可欠。

お邪魔している身とあって無言で立ち去る訳にはいきません。

 

鳥の観察をしている旨を伝え、この場へ留まっても不都合はないか尋ねたところ良い返事を貰うことができました。

 

 

反り返った嘴と長い足が特徴の珍しい鳥であることを伝えると『こんた鳥、見だごどねぇ』と仰りスマホで撮影を始める農家さん。

 

そしてよくある質問。

 

『すげぇカメラだな。何倍なのや?』

 

倍率を聞かれた場合、どのように答えることが正解なのでしょう。

少々カメラを触っている方であれば『そのレンズ何mm?』といった質問をされますが、倍率についての質問と等しく回答に困るのが『何処まで撮れるの?』といった質問。

 

撮る気になれば何mどころか何kmを通り越し何光年も先の星を撮ることができます。

 

回答に困った私は農家さんの軽トラを撮影して画像を見せて差し上げました。

 

 

百聞は一見に如かず。

納得がいったのか農家さんは軽トラに乗り込み田んぼを後に。

 

 

農家さんと雑談していたためソリハシセイタカシギとの距離は少々離れてしまいましたが向かい側の農道からは目の前の位置。

 

そろりそろりと近付き絶好のポジションをキープ。

 

 

採餌の様子について首を左右に振ると前述しましたが、同じように首を左右に振るヘラサギの採餌とは少々異なります。

 

ソリハシセイタカシギの採餌を例えるなら指揮棒を振る指揮者と言えば分かり易いでしょうか。

 

上品な雰囲気さえ感じられる採餌方法をどの様に例えることが正解なのか考えながら観察をしていると...

 

 

上品とは何ぞや。

 

 

何を餌としているのか撮影したいと思い、決定的瞬間を狙っていると耳にしたのは近付きつつある車のエンジン音。

 

ふとファインダーから目を離すと雑談を交わした農家さんが再び現れ、よく見ると助手席にはお母さんの姿が。

珍しい鳥をお母さんにも見せようとわざわざ自宅から連れて来たのでしょうか。

 

ソリハシセイタカシギを指差し何やら会話をしている様子。

仲睦まじく鳥を見ている姿がとても印象に残りました。

 

 

ソリハシセイタカシギとの出会いは全く予期していなかったこの日。

優しい農家さんのお陰で気分的にも良い休日を過ごすことができました。

 

一時避難をしてきたソリハシセイタカシギは目的地へ辿り着き繁殖の準備を進めていることでしょう。

 

 

本日の観察日記はここまで。