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2024年7月29日

 

 

 

本日の更新の日記は7月7日の観察から。

 

今回の日記は遡ること7月5日午後から始まります。

 

予定外の仕事が飛び込み社用車を走らせていた時の出来事。

間もなく仕事先へ到着といったタイミングで目にしたのは小さな池の畔に佇むアカショウビンでした。

 

池は大きな水溜まりと云っても過言ではなかったため「こんな所にアカショウビン?」と自分の目を疑いたくなるほどでしたが何はともあれ証拠写真を残すことに。

 

社用車に常備している双眼鏡にスマホを押し当て撮影しようとした瞬間、タイミング悪く飛ばれてしまい撮影失敗。

 

 

池から仕事場は目と鼻の先ということもあり仕事中も気掛かりでしたが、帰社時にアカショウビンの姿は確認できませんでした。

 

果たして偶然だったのか、それとも定着しているのか...

 

 

この目撃から二日後の7月7日、真相を究明するため張り込もうと考えていましたが、秋田県は未明から大雨。

 

小康状態のタイミングを見計らい自宅を出発したものの再び強雨見舞われご覧の有り様です。

 

 

風向きによっては窓を開けられないほどの降り方に一時は帰宅を考えましたが、行かずに後悔するよりなら行って後悔を選択。

 

現地へ向かっていると見覚えのある車が停車していおり、ナンバーを確認すると秋田県内で野生動物を撮り歩くアニマルウォッチャー氏の車であることが判明。

 

挨拶がてら話し掛けてみたところ『クマを探しにきた』とのことでしたが現地まであと少しといった場所であったこともあり、近くの池でアカショウビンを目撃した旨を伝えると『実は...知っています。三年ほど前から観察していました』と驚きの返答が。

 

 

氏によるとクマを探していた際、池の付近でアカショウビンの鳴き声を耳にしたため張り込んでみたところ狙い通り飛来したそうです。

 

それからひっそりと観察を続けるようになり現在も大切に見守っている場所なのだとか。

 

氏はこれまでの観察の状況、周囲への配慮をどのように行っているか詳しく話してくださると『クマを探してきます』と言葉を残し現地を離れました。

 

 

私はアカショウビンの飛来を待つことにしましたが、林に響くモリアオガエルの声、そして時々吹き込む風が心地好く次第に瞼は重くなり...

 

瞼を閉じては目を見開き、何度そのようなことを繰り返したでしょう。

 

いつの間にか本格的に寝落ちしており、我に返ったように池の様子を見るとアカショウビンの姿が。

 

 

寝落ちしてからどれくらい時間が経っていたのか。

いつから出ていたのか見当もつきません。

 

アカショウビンが向きを変えて間もなくの出来事。

 

 

飛び立ったアカショウビンは付近の地面に降りると直ぐ同じ場所へ戻りました。

おおかたカエルを捕まえたと思いきや捕獲したのはトンボ。

 

 

あっという間にトンボを飲み込むと再び向きを変え、同じ場所を目掛けて飛び立ちました。

 

 

今度こそカエルを捕まえたと思いきや捕獲したのはまたもやトンボ。

 

 

強雨の影響により飛ぶことができず止まっていたのかもしれません。

 

トンボをニ匹捕食した後は休憩に入り動きの無い時間が続きました。

 

暫くすると聞こえてきたのはサシバの鳴き声。

頻繁に聞こえる鳴き声に反応したのかアカショウビンの視線は上方へ。

 

 

たまたまだったのかまでは分かりませんが、頻りに上方を気にする様子が見られました。

 

不意に飛び立ったアカショウビンは水面へダイブ。

水浴びのため飛び込んだようです。

 

何度か飛び込みを繰り返したため、その様子を撮影しようとMFに切り替えたものの...

 

 

ピントを合わせられず撮影失敗。

 

 

もう2~3回繰り返すとピントを合わせられそうでしたが都合の良い話はありません。

アカショウビンにとっては『そんなこと知るか』といったところでしょう。

 

水浴びを終えたアカショウビンを居場所を変えて羽繕いを始めました。

 

 

羽繕いに掛けた時間は10分ほど。

 

丁寧に羽繕いをした後は再び動きの無い時間が続き、この後見せる動向に注目していると道路を越えて林の中へ姿を消してしまいました。

 

間もなく聞こえてきたのは...

 

『ギョボボボォ』

 

流石に驚きを隠せず。

この時耳にしたのは紛れもなくリュウキュウアカショウビンの鳴き声。

 

アカショウビンの鳴き声を活字で表すと『キョロロロ~』というのが一般的でしょう。

しかし林の中から聞こえた鳴き声は明らかに濁っており、私の耳にはリュウキュウアカショウビンの鳴き声にしか聞こえませんでした。

 

参考までに石垣島で録音したリュウキュウアカショウビンの鳴き声がこちらです。

 

 

リュウキュウアカショウビンを疑い次の飛来を待っているとクマを探すため現地を離れていたアニマルウォッチャー氏が戻られたため事情を説明。

 

ここで氏より聞かされたのは『自分もリュウキュウアカショウビンを疑った節があった』というお話。

 

こちらで見られる雄の個体は光の加減によって上面が強い紫色に見えるそうです。

この話を踏まえて改めて画像を検証すると確かに紫色に見えるカットが多くありました。

 

 

亜種アカショウビンと亜種リュウキュウアカショウビンの違いは大きく三つ。

 

・鳴き声

・上面の色の違い

・腰に見える羽の特徴の違い

 

声についてはリュウキュウアカショウビンの特徴と合致しましたが、上面については撮影時の光の加減により異なるためこの日の画像だけでは判断することができません。

 

こちらは石垣島で観察したリュウキュウアカショウビン。

 

 

腰に見える水色の羽について過去に別の場所で撮影した画像と比較します。

 

【 2010年観察個体 】

【 今回の個体 】


 

比較するにはかなり苦しい画像ですが、今回見られた個体は2010年に観察した個体に比べると腰に見える水色の羽がやや太いことが見て取れました。

 

これはリュウキュウアカショウビンの特徴に似ており宮古島で観察した個体と比べてみると...

 

 

宮古島で観察した個体は幅こそ一致するものの色が淡く白色と云っても過言ではないように思います。

 

石垣島で観察した個体も同様ですが、南西諸島で見られるリュウキュウアカショウビンは水色というより白色に近く、背に近い位置まで筋状の羽が伸びていました。

 

これらの特徴を総合的に勘案した結果、今回見られた個体は亜種リュウキュウアカショウビンではなく、リュウキュウアカショウビンの血を受け継いだ個体なのかもしれません。

 

 

これはあくまでも私の見立てによるもので、正確な答えを導き出すためには抜け落ちた羽を回収しDNA鑑定でもしない限り判断できないでしょう。

 

ただ一つ言えることは亜種アカショウビンと呼ぶには多くの疑問が残る個体ということ。

 

 

調べてみたところ本州でもリュウキュウアカショウビンの観察例があり、本県にもリュウキュウアカショウビンが渡来していてもおかしくはありません。

 

今回は鳴き声から始まったリュウキュウアカショウビン疑惑でしたが、その後の観察では確信に迫ろうとこれまでとは違った観察を楽しむことができました。

 

 

この日の観察から約三週間が経過しましたが、先週は全国版のニュースでも大きく報じられた通り梅雨末期の大雨災害が発生。

 

少なからずアカショウビンの育雛にも影響があったかもしれません。

 

心配は尽きませんがこの地で生まれた血筋が絶えることなく代々受け継がれていくことを願うばかりです。

 

 

本日の観察日記はここまで。