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2022年3月7日

 

 

 

 

本日更新する日記は先月26、27日の観察分から。

 

例年この時期は秋田県以南で越冬していたガン・カモ類が北上することで渡りの中継地となっている大潟村は大変な賑わいを見せます。

 

しかし今季は大雪の影響が長く続いた為、3月に入りようやく北帰行が本格化しました。

これは例年に比べると約一ヶ月遅いものです。

 

ここ数日気温の上昇で雪融けが一気に進みましたが先月の月末までは多くの田んぼは雪に閉ざされており、今年の春は一体いつ訪れるのかと非常に気を揉む毎日でした。

 

 

2月に入ると秋田市上空を北上するガンの群れを目にするようになりますが、そのほとんどは宮城県で越冬していた個体群。

 

渡りが始まった頃は南北を行ったり来たりする姿を例年目にしていますが、今季目にしたのは東西に移動する異例の姿でした。

 

 

今までに見られなかった動きは大雪の影響によるものと容易に想像できましたが、気になるのはその行き先。

 

厳密に言うと秋田市から見て南西方向に飛んでおり、県内でも比較的温暖な沿岸南部の地域を目指していたようです。

 

そのような姿を度々目にしたことから今回は私が南下し、ガンの群れはどの様に過ごしているのか巡回してみることに。

 

 

自動車専用道を利用し沿岸部を南下すると由利本荘市に入った頃からあちこちでガンの群れを目にするようになりました。

 

いずれも雪の少ない田んぼで見られましたが、由利本荘市から更に南下すると完全に雪融けした田んぼもあり大潟村で例年見られるような光景が。

 

 

あちこちに点在するガンの群れを見て回ると大多数はマガンでしたが、ヒシクイ・ハクガン・シジュウカラガンの姿も見られました。

 

26・27日の両日共、ハクガンとシジュウカラガンを主体として観察を行いましたが今回の日記ではシジュウカラガンに焦点を当てたいと思います。

 

 

日本へ渡ってくるシジュウカラガンの主な越冬地は宮城県。

 

秋田県でも少数越冬していますが、渡りの時期(特に北帰行)になると宮城県で越冬する個体群が大潟村を中継することで観察の機会は格段に多くなります。

 

 

曾ては東京でも見られていたようですが、絶滅寸前まで個体数を減らしたことで日本に渡来する個体はほんの僅かだったという記録を見聞きしました。

 

私が野鳥観察を始めた当時、日本へ渡ってきたシジュウカラガンの総数は百数十羽だったと記憶していますが現在は6000羽程まで増えたでしょうか。

 

 

個体数が増えた背景に1980年から始まった羽数回復計画があります。

 

絶滅の危機に直面したシジュウカラガンとハクガンを日本の空に復活させようと尽力された方々がおり、その方たちのお陰で私たちは今この様にして見ることができるようになりました。

 

 

政治的に立ち入ることのできなかった繁殖地や具体的にどの様な形でプロジェクトが進められたのかなどwebで検索すると詳しく見ることができます。

 

見るも涙語るも涙の物語はシジュウカラガンとハクガンを観察する上で欠かすことができません。

 

羽数回復計画について知らない方は是非ご一読を。

 

 

前置きが長くなりましたが今回の観察では両日を通じて400羽ほどのシジュウカラガンを確認できました。

 

纏まって見られた群れは最大でも30羽ほどでかなり分散していたようです。

 

 

一つ一つの群れとしては規模が小さかったものの総数としては秋田県で越冬する個体数より遥かに多かったことから、一度宮城県から北上した個体がこちらの地域に南下したことが伺えます。

 

この日の時点でも宮城県には7万羽のガンが居残っているという情報があり、本隊はそちらで北帰行のタイミングを待っているのかもしれません。

 

 

マガンほどではありませんが、ハクガンに比べると警戒心が強いと感じるシジュウカラガンとの距離の置き方はなかなかシビア。

 

勇み足が過ぎると飛ばしてしまい結果として距離が離れてしまいます。

 

 

大潟村と違いこちらの地域の水田は入り組んだ形状になっており、一度距離を取られると観察が難しいと感じました。

 

規模の大きな農耕地で見られるシジュウカラガンもやはり警戒心は強く、不用意な動きを見せることはできません。

 

シジュウカラガン単体の群れであれば比較的近くから見ることができても、マガンの群れに混ざると一筋縄ではいかず慎重な行動が求められました。

 

 

観察していて特に感じることはヒシクイ・マガン・ハクガンに比べると歩き回ることが多いという点。

 

 

上記3種は比較的同じような場所で餌を採りますが、シジュウカラガンは頻繁に移動を繰り返し採餌を行います。

 

この習性から背景に見える畔や構造物を水平に写したい私はいいように弄ばれました。

 

 

良い位置に付けることができたと思ってもどんどん歩いて行ってしまいます。

 

忙しく動き回るシジュウカラガンにお手上げ状態。

 

 

撮影という面においては悪天候の影響もあり今一つという結果に終わりましたが、久しぶりにシジュウカラガンをじっくりと観察することができ充実した週末を過ごすことができました。

 

 

26日には久しぶりに我が師とフィールドで顔を合わせる機会があり、田んぼで採餌をしているマガモに混ざりトモエガモが見られるとの情報を頂いたことからこちらも併せて観察。

 

 

他地域で容易に見られるトモエガモも秋田県においては珍しい部類のカモ。

 

シジュウカラガン以上に忙しく動き回る行動にピンボケ画像を量産し撮影枚数は嵩む一方でした。

 

そこはデジタル、押したもの勝ちだと無駄に鉄砲を打ちましたが及第点を付けることができた画像は僅か2枚。

 

 

観察も撮影も難しい野鳥を相手に飽きることはありません。

 

 

今回の日記では主にシジュウカラガンの話題を取り上げましたが、次週更新の日記ではハクガンを取り上げたいと思います。

 

本日の観察日記はここまで。