2024年2月13日
本日更新の日記は先月4日の観察分から。
当ホームページをご訪問くださる方には申し訳ありませんが今回の記事もヤマドリの観察記。
『もう飽きたよ』と仰る方も少なくないことでしょう。
私自身よく飽きもせず観察を続けていると思っていますが、ヤマドリの観察には中毒性があるようです。
この中毒性については追々お話するとして冬季休暇最終日となった1月4日もヤマドリの観察へ出かけました。
観察を始めるにあたり各エリアを順に回ってみたものの時間が早過ぎた為か1羽も出ておらず。
そこで起点エリアを拠点に出待ちしてみることに。
待機すること約4時間、山肌を移動する雄の個体1羽を確認。
画像を拡大して羽の特徴を検証したところ隣のエリアに頻出する個体であることが判明。
こちらの個体はこれまでの観察から警戒心の緩い個体であることが分かっており、いつもと違った場所から様子を見ることにしました。
この時の時刻11時34分。
山肌で何かを啄みながら移動を繰り返している様子。
間もなく沢の陰へ入ってしまいヤマドリの動向が掴めません。
このまま沢伝いに隣のエリアへ移動してしまうのか、それとも起点エリアで採餌を始めるのか。
淡い期待を抱いて様子を伺っていると...
「出た」
様子伺っていたのは寧ろヤマドリ方だったのかもしれません。
暫くこの状態が続き、私の車を警戒すべき対象なのか見定めていたのでしょう。
一時的に顔の見えなくなる時間があり「やはりこの場所では不味いか」と観察を諦めかけた頃、ヤマドリが姿を見せました。
顔を覗かせてから既に27分が経過。
周囲の様子を伺いながら歩き始めると一度立ち止まり伸びの姿勢。
ヤマドリの伸びを見たのこの時が初めて。
コソコソを歩く様子がたまりません。
この姿こそ私の観察欲をくすぐります。
冒頭でも触れた通り中毒性はこの部分にあり、観察を重ねるにつれジシギの観察に似ていると思うようになりました。
行くと見られる鳥の観察は楽ですが、私は苦労を強いられるほど楽しさを感じます。
探して見つける楽しみや、何時間も待って見られた時の喜びは上手く表現することができません。
警戒心の塊とも言えるヤマドリをこの様に観察できるようになったのは連日時間を費やしたからこそ。
我ながらよくここまで漕ぎ着けたと思います。
こちらの場所は常に日陰となる場所ですが、一部に陽射しが届きヤマドリの羽衣も光り輝いて見えました。
金属光沢を帯びる羽衣が日陰と日向ではどう違って見えるか、こちらの動画からご覧頂けます。
見ての通り日陰では黒っぽくも見えますが少しでも日向へ出ると途端に印象が変わり美しいことこの上無し。
自然が織り成す造形美とはこのことでしょうか。
雪の下に埋もれる落ち穂を探して活発に動くヤマドリでしたが、少しずつ私の方へ近寄りつつありました。
「一体何処まで寄って来るのだろう...」
時々立ち止まってはこちらの様子を伺い、動き出すと何の躊躇いもなく採餌を始めます。
流石にそろそろ引き返すだろうという私の予想に反し、どんどん近寄ってくるヤマドリ。
幾らなんでも近寄り過ぎじゃないかと思いながら採餌の様子を見ていましたが、遂に目の前へ到達。
これには私が身を引きたくなるほど。
この時、私との距離は3mほどだったでしょうか。
流石にこの距離では一目散に逃げてしまうと思っていたのですが、私の様子を伺いながらも地面を掘り起こし始めたヤマドリ。
至近距離だからこそ見えてきたのは蹴爪の鋭さ。
足の後ろに見える棘のような突起が蹴爪。
縄張り争いではこの蹴爪を使って相手を攻撃するのだとか。
時に縄張り入った人間に襲い掛かることもあり、足を振り下ろすように攻撃するそうです。
細部の特徴まで見ることのできるこの距離感。
私の見た目に近づける為には何が最良となるのか試行錯誤を繰り返しましたが、結果としては何一つとして納得できる画像を残すことは出来ませんでした。
先ずはスマホで撮影したこちらの画像。
色乗りが悪くヤマドリが黒く潰れてしまっています。
ズームレンズで撮影したこちらの画像は下に車のドアを取り込むことで、距離感を表せると思ったのですが改めて画像を見直すと今一つ...
写真の出来栄えはさておき、この距離で観察できる機会は滅多にありません。
肉眼でもじっくり観察したいと考えた私は一度撮影を止めその様子を暫く眺めていました。
距離が近いだけに固唾を飲んで見守りましたが、文字通り唾を飲むと噎せてしまう加齢現象。
この時も自分の唾に噎せて咳き込んでしまう場面がありヤマドリはこちらを凝視。
流石に不味いと思いましたが意外にも逃げ出す素振りはなく黙々と地面を掘っていました。
加齢と共に自分の唾で噎せる機会が多くなり老いを感じる今日この頃。
「それにしてもいつまで地面を掘る気なのか...」と時刻を確認すると目の前へ到達してから21分が経過していました。
一向に山へ戻る気配が無かったことから採餌の様子を動画で撮影してみることに。
この頃から尿意を催しはじめ一刻も早く移動したいところでしたが、ヤマドリを目の前に動く訳にはいきません。
今後の観察を考えても警戒させないようヤマドリが山へ戻るまで我慢する他ありませんでした。
私の尿意など知る由もないヤマドリは依然として地面を掘り続け、膀胱は満タンとなりお漏らしまでのカウントダウンが...
こちらの画像、撮影した当時の記憶がありません。
おそらく尿意が先に立ち記憶が飛んでしまったのでしょう。
最早これまでと思った14時01分、ようやくヤマドリは採餌を終え山へ戻っていきました。
沢の陰から顔を覗かせてからおよそ二時間。
これまでの採餌は幾ら長くても一時間と限定的なものでしたが、この日の採餌は最長の記録となりました。
嬉しい記録とは裏腹に私の膀胱は我慢の限界。
ヤマドリの姿が見えなくなったタイミングを見計らい慌てて移動しましたが、少しでも遅れていたら大惨事になっていたことでしょう。
ヤマドリの観察に注力した冬季休暇はこうして幕を閉じましたが、新年早々お漏らしせずに済んだのが何より。
この歳になると意図せず雫が漏れたり自らの唾で噎せたりと老化が著しい悲しき年男です。
本日の観察日記はここまで。