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2023年12月11日

 

 

 

本日更新の日記は前週の続編。

 

前週の日記にも記載しましたが、業務多忙につき6月より探鳥ガイドの受付を休止しています。

 

しかし今回は『アオハクガンを見たいのですが広い大潟村のなかから探せる自信がありません』と仰るお客さんよりガイドの依頼を受け、11月11~12日の日程で急遽ガイドを引き受けることになりました。

 

日程初日はお客さんの要望に応えアオハクガンを捜索。

幸いにも2羽見つけることができ、じっくりと観察して頂くことができました。

 

ハクガン三昧の締め括りとして夕方からは塒入りを観察。

 

 

この日は群れの半数が明るい時間帯に塒入りしたこともあり、はっきりとその様子を観察することができました。

 

当初の予定では2日間かけてアオハクガンを観察する計画でしたが、初日の時点で満足のいく観察ができたと仰るお客さん。

 

そこで日程2日目は男鹿半島へ繰り出し珍鳥探しをしてみることに。

 

 

男鹿半島での探鳥は当初の計画にはなく、博奕性の高い珍鳥探しはそれ相応のリスクを伴います。

 

空振り覚悟で男鹿半島を巡るか、堅実に大潟村で観察を行うか充分に協議した結果、お客さんの天秤は男鹿半島に傾きました。

 

 

何ヵ所かの探鳥地を巡るなか、お客さんからこのような質問が。

 

『秋田でヤツガシラはどの様に見られていますか?』

 

ヤツガシラは神出鬼没。

餌の採り易さから生息環境として芝生を好む傾向にありますが、時として民家の庭先で見られることも。

 

秋田では春の記録がほとんどであり、私自身3~4月の渡りのシーズン以外見たことがありません。

 

毎年渡来は確認されているものの神出鬼没のヤツガシラを広い男鹿半島のなかから探し出すのは非常に困難。

 

こうした事情からヤツガシラを目当てとしたガイドはあまりにも博奕性が高く、これまでに何度もお断りしてきたという話をしていたところ...

 

 

「え...?」

 

「お客さん!ヤツガシラが居る!」

 

 

流石に自分の目を疑いましたが噂をしていたヤツガシラが目の前に。

 

何故この時期にと首を傾げる私と対照的に大喜びのお客さん。

 

しかし発見して間もなく、ヤツガシラは奥まった畑へ飛んでしまいました。

直ぐ捜索に当たったものの車から見える範囲内では見当たらず...

 

徒歩で捜索したいところでしたがヤツガシラは人間の姿を嫌う個体が多く、下手をすると事態の悪化を招きかねません。

 

ヤツガシラの生態を鑑みて車での捜索を暫く続けましたが残念ながら見つけ出すことはできませんでした。

 

 

お客さんに要望を伺ったところ『遠くからでももう一度ヤツガシラを見たい』と懇願され、やむを得ず徒歩での捜索を行うことに。

 

歩き始めて間もなく耳にしたのはオジロビタキの鳴き声。

 

付近にオジロビタキが居ることは間違いありません。

そこで鳴き声を頼りに周囲の様子を探ってみると声の主をあっさり発見。

 

 

枝や杭に止まっては地面へ降りるオジロビタキ。

 

せっせと採餌していましたが、今まで観察してきたなかでも特に動き回る個体で同じ場所へ数秒たりとも留まりません。

 

オジロビタキの動きを目で追っていると見慣れぬ鳥の姿が...

 

 

双眼鏡を覗いてビックリ、見慣れぬ鳥の正体は第一回冬羽のオオマシコ。

 

 

私にとって第一回冬羽のオオマシコを見るのは初めてとあり、ガイドする身でありながらヤツガシラ以上に興奮していました。

 

こちらの個体は単独で採餌しており周囲に他の個体は見られず。

 

行動はオオマシコらしく人間の気配を気にする様子は見られず、採餌の様子をしっかりと観察することができました。

 

 

暫くすると付近の藪に移動し一休憩。

 

 

この日の前週、近場で成鳥のオオマシコを2羽目撃しており当時の様子は先々週更新の日記に記載しましたが、アトリ科の鳥が多い今季、オオマシコも当たり年になるのでしょうか。

 

もしそうだとするとこれからのシーズン楽しみでなりません。

 

藪に移動から5分ほど経つと再び採餌を始め羽の特徴をしっかりと観察。

こちらの個体は雄と判断してよいでしょう。

 

 

この間にもオジロビタキは周囲を行ったり来たり。

 

遠くへ行ったと思えば近付いて来たりと行動範囲が広いようです。

 

 

オジロビタキとオオマシコは棚から牡丹餅でしたが、肝心のヤツガシラは見当たらず...

 

お客さんの要望を伺うとやはりヤツガシラが見たいとのことで、捜索範囲を更に広げ探してみることに。

 

 

一旦車へ戻りゆっくり移動していると前方に怪しい影が...

 

双眼鏡で確認するとビンゴ。

ヤツガシラを再発見しました。

 

 

地面に嘴を挿し込んでは獲物を放り投げ、独特の採餌方法を見せるヤツガシラ。

 

いかんせん距離が遠い...

 

もう少し近くで観察したいところでしたが、こちらの場所は道幅が狭く車の角度さえ変えることができません。

 

仕方なしに遠巻きからの観察を続けていると不意に飛び立ち姿が見えなくなってしまいました。

 

ここで私は博奕に打って出ます。

捜索の為に動くことはせず、ヤツガシラが同じ場所へ現れることを期待して車を少し移動。

 

採餌していた場所の目の前には停車帯があり、そちらへ車を寄せてヤツガシラの飛来を待つことにしました。

 

 

待つこと20分。

 

丘陵の陰に見え隠れするヤツガシラの冠羽を確認。

間もなくして上半身が見えました。

 

 

至近距離からの観察でしたが私たちは車内に留まっているためこちらを気にする様子は見られません。

 

間近で見るヤツガシラにお客さんは大喜び。

 

 

採餌の様子を見ているとクモを捕食する場面が圧倒的に多く、こんなにも地面にクモが潜んでいるのかと驚かされます。

 

 

30分ほどこちらの場所で採餌を続けてましたが、雨が強まったタイミングで付近の樹木へ移動。

 

どうやら雨宿りの為に移動したようです。

 

 

ヤツガシラは雨を苦手とする鳥なのか、過去の観察においてもこうした場面を目にしていました。

 

雨が落ち着くと採餌を再開するだろうと考え、その場に待機すること30分。

全く止む気配が感じられず、気象アプリで雨雲の動きを確認すると男鹿半島には帯状に連なる雨雲が...

 

あまりの手持ち無沙汰に動画を撮影。

 

 

結果的に雨宿りする姿を一時間以上眺めていました。

 

やっと小降りになったかと思うとあらぬ方向へ飛び去ってしまったヤツガシラ...

 

これには唖然。

間違いなく採餌を再開すると思っていただけに大きな誤算です。

 

しかしお客さんはこれほど長く観察できるとは思わなかったとのことで、ヤツガシラには区切りをつけ新たな出会いを求めているようでした。

 

 

この期待に応える為には異なる環境で探鳥しなくてはならないと考え、別の探鳥地を目指し車を走らせていると道路脇から飛び立ったのはユキホオジロ。

 

真っ白に見えるその姿はインパクトが強く、お客さんも『ユキホオジロ!』と反応するほど。

 

まさか交通量の多い道路脇に居るとは思わず飛ばしてしまいましたが、そう簡単に諦められるものではありません。

 

周辺を行ったり来たりしながらユキホオジロを探していると目に入ったのは3羽のベニヒワ。

 

 

私が思う以上にお客さんの反応が良く、話を伺ったところ至近距離で見るのは初めてだとか。

 

車内からの観察ということもあり撮影するには近過ぎると思う位置まで近寄ってくる場面も。

 

 

お客さんにとっては願ったり叶ったりの観察になったことでしょう。

 

この日は他の場所でもベニヒワを見る機会があり、やはり今季は当たり年だと感じさせられました。

 

 

忙しなく動き回るベニヒワが少し遠退いたタイミングで動画を撮影。

動画では採餌の様子を見ることができます。

 

 

ベニヒワの観察を満喫した後は再びユキホオジロの捜索に出ましたが、何処を回っても姿を目にすることはありませんでした。

 

ここで時刻を確認すると男鹿半島での探鳥はタイムリミット。

 

無事にお客さんを空港へ送り届けなければなりません。

空港を目指し走り始めて間もなく、目にしたのはホバリングするケアシノスリ。

 

場所が場所だっただけにお客さん優先で撮影して頂きましたが、私がカメラを構えた時には飛去してしまいました。

 

残念ながら私は撮影に至らなかったものの最後の最後に良い出会いに恵まれ、男鹿半島での探鳥はちょっとした離島気分を味わえたのではないでしょうか。

 

 

ケアシノスリの観察に時間を割いてしまったことで慌てて車を走らせると道路脇にヤツガシラが...

 

流石に後ろ髪を引かれる思いでしたが、秋田空港までの道のりを考えると止まっていられません。

 

泣く泣く男鹿半島を離れ秋田空港を目指しましたが到着したのは保安検査終了10分前。

本当にギリギリでした...

 

最後は慌ててのお見送りとなってしまいましたが、2日間という短い日程で目一杯秋田での観察を楽しめたことと思います。

 

 

Mさん、寒いなかでの観察お疲れ様でした。

また機会がありましたら秋田へお越しくださいませ。

 

 

今回は2週に渡りガイドの様子を綴りましたが、本日の観察日記はこれにておしまいです。