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2024年4月15日

 

 

 

本日更新の日記は3月31日の観察分から。

 

この日はバードウォッチングを始めて間もない方より『観察に同行させて欲しい』という依頼を受け、新米さんと一緒に男鹿半島を巡りました。

 

 

前日は南西の風が吹き荒れ、渡り鳥にとって多大な影響があったことでしょう。

こうした天候の後は珍鳥と遭遇する可能性が大。

 

この時期に天候が荒れると驚くような珍鳥が現れることもあり、数年前にはオオチドリの記録がありました。

 

 

珍鳥との出会いを期待する私と対照的に新米さんにとっては何を見ても新鮮な時。

初心忘れるべからずという言葉があるように、私も原点に立ち返り経験則で物事を考えないよう丁寧な探鳥を心掛けました。

 

最初に覗いた港では移動途中のスズガモが沢山。

 

 

こちらではウミアイサ・ヒドリガモ・ハジロカイツブリ・カンムリカイツブリの他、キジバト・イソヒヨドリ・コチドリを観察。

 

次に立ち寄った港では夏羽に換羽したアカエリカイツブリを見ることができました。

 

 

本県において赤褐色に換羽した頸部を見る機会は少ないため、もう少し光線の良い条件で撮影したかったというのが本音。

 

この後も各チェックポイントを巡回しながらジョウビタキ・カワラヒワ・ハクセキレイ・マガモ・ヒバリ・シジュウカラ・ヒガラ・アカゲラ・カケス・ホオジロを観察できたものの珍しい種を見つけることはできず...

 

オオセグロカモメとウミネコが沢山見られた海岸ではアオサギとダイサギの姿も。

 

こちらのダイサギは飾り羽が伸長しゴージャスな装いに。

 

 

新米さんは普段思うように鳥を見つけられなかったとのことで、次々に見られる鳥たちに喜んでいる様子でした。

 

その後も各地で探鳥を重ねていると100m先で採餌するハクセキレイに違和感を覚え、双眼鏡を覗くとホオジロハクセキレイであることが判明。

 

 

ようやくこの時期らしい鳥を見つけることができました。

慎重に車を移動し車内から観察。

 

 

新米さんにとっては先に観察していたハクセキレイと見分けがつかない様子でしたが、頬の白さから何処となく“綺麗”といった印象を受けていたようです。

 

この日の前週、私は与那国島や石垣島で沢山のホオジロハクセキレイを目にしていただけに特段の新鮮味は感じられませんでしたがここは秋田。

 

 

南西諸島では当たり前に見られるホオジロハクセキレイも秋田で観察できる機会は多くありません。

 

幾ら前週に沢山見たとしても秋田では貴重な記録となるため観察にも熱が入りました。

 

 

何よりも驚かされたのは2羽同時の記録であったこと。

 

これまで秋田でも何度か観察していましたが、いずれの記録も単独であったため複数の個体を目にしたのは今回が初めて。

 

 

餌となる生き物はクモが多く、極小のミミズを捕らえる場面もありました。

 

 

暫く観察を続けていると不意に飛び立ち姿を見失う失態。

 

飛んだ方向だけを頼りに捜索する他なく、なかなか見つけられず右往左往していたところ目の前突然飛び出してきたのはヤツガシラ。

 

思わず「ヤツガシラ!!」と声を上げた私に新米さんはさぞかし驚いたことでしょう。

 

与那国島でも全く同じような場面がありましたが、目の前を横切ったヤツガシラは最寄りの木へ止まったため撮影を試みると...

 

シャッターを押す寸前飛ばれてしまい撮影失敗。

 

姿が見えなくなり落胆の色を隠せませんでしたが間もなく畑を縫うように歩くヤツガシラを発見することができました。

 

 

畑の縁を歩き始めたタイミングを狙い慎重に観察と撮影を開始。

 

餌とする生き物は甲虫類の幼虫やクモがほとんど。

与那国島や石垣島のように秋田ではゴキブリを食べる姿は見たことがありません。

 

 

ホオジロハクセキレイと同様にヤツガシラも旅先で沢山観察できていたことから二番煎じの観察となってしまいましたが、何よりも嬉しかったのは新米さんに見せることができたこと。

 

秋田では毎年見られるものの運要素が強いヤツガシラの観察。

 

そういった意味で今回は非常に運が良かったと言えるでしょう。

 

 

更に良かったのは距離を置いての観察であったため、撮影できた画像に秋田らしさを取り込めたこと。

 

ヤツガシラに限らず野鳥撮影をしていると思いがけず被写体との距離が縮まりフレームいっぱいになってしまうことも屡々。

 

 

対峙する距離が近くなると嬉しく思う反面、後から画像を見直してみると何時・何処で撮っても同じようなものに...

 

そういった意味でもこの時に撮影できた画像は個人的に満足のいくものになりました。

 

 

熱心に観察する新米さんとヤツガシラを眺めていると視界の片隅に一瞬映った黒い影。

大袈裟に例えるとコクマルガラスの幼鳥のようにも思えましたがそんなはずはありません。

 

 

この時、コンマ数秒のうちに脳裏を過ったのは石垣島の友人が発信したこちらのポスト。

 

 

今春の与那国島と石垣島も含め、春の観察旅行では外しに外しまくっていたクロウタドリ。

 

未だ見たことがなかっただけに『でかい』というフレーズだけが印象に残り、目にした黒い影をクロウタドリと疑いました。

 

 

地形の起伏で姿は見えないものの遠くへは移動していないはず。

姿が見えるチャンスを伺い、その時を待っていると...

 

地面から突然飛び上がり付近の枝へ止まった黒い影。

 

 

「ビンゴ!!」

 

 

予想通り黒い影は初めて目にするクロウタドリ。

 

石垣島の友人が『でかい』とポストしたように確かにクロツグミとは比べものにならないサイズ。

 

サイズのインパクトと同時に湧き上がる喜び。

これほど嬉しく思えたのはオオチドリを発見して以来だったでしょうか。

 

その喜びも束の間、クロウタドリはあらぬ方向へ..

 

 

一瞬のうちに姿が見えなくなり何処へ行ってしまったのか分かりません。

 

そう易々と諦められるものではなくここから執念の捜索。

いつもとは事情が異なるため捜索にも熱が入りました。

 

意地になって捜索していると民家の軒先で枝に止まるクロウタドリを発見。

 

 

それなりに観察経験のある鳥であれば適切な間合いの取り方など身の置き方について考えなくとも動けますが、この時は飛ばれることを恐れ身動きが取れず...

 

私の緊張状態を他所に美しい囀りを何度も聞かせてくれるクロウタドリ。

和名に由来する歌を聞くことができたことも私にとっては大きな収穫です。

 

 

暫く膠着状態が続くとクロウタドリがこちらへ飛来。

千載一遇のチャンスが訪れカメラが壊れるほどの力を込めてシャッターを押し続けました。

 

 

念願叶って全身をしっかり見ることのできた瞬間。

 

間近に見るクロウタドリはやはり“大きい”の一言。

 

黒い影という認識でしかなかった時は大袈裟にもコクマルガラスの幼鳥と例えましたが、コクマルガラスは33cmとハト大の大きさ。

 

一方、クロウタドリは28cmとやや小さいもののトラツグミに匹敵する大きさであるようです。

 

鳥の体長において5cmというのは大きな差になりますが図鑑に記載されるサイズと実物の印象は全く別物と感じることも多く、私にとって初めて見るクロウタドリは“大きい”という印象が色濃く残りました。

 

二度、三度と地面を突っつくような動きを見せた後は塀の上へ。

 

 

間もなくクロウタドリは飛去してしまい、その後姿を見ることはありませんでした。

 

 

クロウタドリの秋田県初記録は2009年1月。

それから15年が経過し、今回の記録は本県において2例目となるようです。

まさか地元で見られるとは思わなかっただけに本当に嬉しい発見。

 

 

地に足が着かないような気持ちで再びホオジロハクセキレイの観察に当たると、何処から現れたのか3羽に増えるイリュージョン。

 

今回観察できた複数のホオジロハクセキレイ・ヤツガシラ・クロウタドリは冒頭でも述べたように前日の南風が影響したのでしょう。

 

 

オオチドリの記録を例に挙げても春の渡り季は南西の風が強まり荒れた天候の後は要注意。

本県においても与那国島で見られるような旅鳥が現れるかもしれません。

 

今後こうした気象条件にも気を配りつつ丁寧な探鳥を心掛けなければと思わされる一日となりました。

 

 

本日の観察日記はここまで。