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2023年6月9日

 

 

 

本日更新する日記は旅先での思い出を綴る観察旅行記。

 

日本各地を旅するようになり様変わりした私のライフスタイル。

近頃は固有種の観察以外に修行と称し著名な観察地を訪ねてみるのも楽しみの一つとなりました。

 

旅の選択肢が広くなりつつありますが、これまでの軌跡を辿ってみると行き先として選ぶのは北海道と沖縄の島々が多く、次いで多いのは九州といったところでしょうか。

 

小笠原諸島で見られる固有種や海鳥にも興味はあるものの、約1週間の旅程を要するため未だ実現に至っておりません。

 

 

まだまだ未開の地が多く、純粋に旅を楽しみたいという側面から今回旅先として選んだのは利尻島。

 

利尻島は北海道北部の日本海側に位置しており、日本の島嶼部としては18番目の面積を有しているそうです。

 

私にとって初めて訪れる場所ということもあり久しぶりにマップを掲載。

 

 

赤ピンを立てた場所が利尻島になりますが、島の面積を調べてみたところ約182㎢とのこと。

秋田を代表する探鳥地、大潟村よりも少し広い面積と言えば想像し易いでしょうか。

 

円形の島の中央には利尻富士と呼ばれる利尻島が聳え、地名はアイヌ語の『リ・シィ』が語源となり「高い・島」を意味するそうです。

 

 

私にとって利尻と言えば利尻昆布を思い浮かべるくらいで詳しいとこは何も分かりません。

果たして利尻島はどのようなところなのでしょう。

 

 

2023年 野鳥観察の旅 in 道北 ① (6月)

 

 

日程初日は秋田空港から千歳空港を経由して利尻空港を目指しました。

 

6月~9月の間はANA便が就航しているため気軽に利尻の旅を楽しめるようです。

 

この日は生憎の空模様だったこともあり、秋田から利尻までの空路はほとんど雲を眺めるだけでしたが着陸に際し見えてきたのは礼文島。

 

 

間もなく目的地の利尻島を見ることができました。

 

 

利尻富士と呼ばれるだけあって富士山のような形をしています。

山をくり抜き、そっくりそのまま海に浮かべたような印象を受けました。

 

利尻空港へ着いたのは13時45分。

 

 

自宅から半袖一枚でやって来ましたが、降機した瞬間冷たい風に曝されとにかく寒い。

 

この日の利尻島は最高気温14℃の予報に加えて風も強く気温以上に寒さを感じました。

 

早速ジャンパーを羽織りレンタカーを調達。

 

 

今回の旅行でお目当てとしたのは日本に分布するキツツキ科のなかでも最大種のクマゲラ。

しかしこのクマゲラ観察について暗雲立ち込めるような話がありました。

 

バードウォッチングツアーを催行している大手企業のツアー報告に目を通してみたところ、利尻島では『クマゲラに出会うことはできたもののじっくりと観ることはできなかった』との文言が...

 

5月中に2回催行されたツアーでは、どちらの報告にも同じ文言があり「利尻島へ行けばクマゲラに会える」と安易な考えを持っていた私に厳しい現状を突き付けられてしまいました。

 

 

知り合いが居る訳でもなく何の情報も無い利尻島で果たしてクマゲラに出会うことはできるのか。

 

初めて訪れる島とあって右も左も分かりませんが悩んでいる暇はありません。

闇雲に車を走らせていると森林公園を発見し、先ずはこちらで探鳥を始めてみることに。

 

 

小雨の降るなか散策路を歩くと周辺からコマドリの鳴き声が盛んに聞こえてきます。

その他にミソサザイやコルリなど様々な鳴き声を耳にすることができました。

 

不意に目の前に現れたのはエゾアカゲラ。

 

 

沢山の虫を咥えていることが見て取れ、子育て中であることが伺えました。

 

また藪の中からはノゴマの囀りが。

目の前で鳴いているにも関わらず姿が見えません。

 

おそらく相手側からは私の存在は丸見えでしょう。

少々ムキになったこともあり姿を確認できるまでにそこそこの時間を費やしてしまいました。

 

 

肝心のクマゲラは気配も感じられず。

 

しかし所々で食痕や嘗て使っていたであろう巣穴も確認でき、この付近にも生息していることは間違いないようでした。

 

散策路を右往左往しながらも18時までクマゲラを探して回りましたが結局この日は鳴き声すら確認できず、最後に飛去するツツドリを撮影して終了。

 

 

旅を計画した当時は「初日に発見できるだろう」と高を括っていましたが、現実は甘くなく更なる試練が...

 

 

翌日の天気予報を確認したところ未明から雨が降りだし午前中は土砂降りの予報。

徒歩での探鳥は困難なことが容易に想像でき頭を抱える羽目となってしまいました。

 

しかし悩んだところで天気だけはどうすることもできません。

 

腹を括ってビールを煽り、夕食は海の幸を堪能。

 

 

ウニの釜飯、大変美味しゅうございました。

 

 

2023年6月10日

 

 

日程2日目。

 

この日の朝は予報通りの空模様。

地面を叩き付けるように雨が降り、バードウォッチングどころか外に出ることさえ躊躇う状態です。

 

悩ましい空模様と裏腹に提供された朝食はとても美味しく朝からお腹いっぱいに。

 

 

特に自家製クロワッサンは今まで食べたクロワッサンのなかでも一番と思えるほど。

できることなら10個くらい食べたいほどでした。

 

 

朝食を済ませ直ぐに宿泊先を出発しましたが、観察不可という状態が続いていたことから観光がてら島を一周してみることに。

 

始めに訪れたのはフェリーターミナル。

 

 

夕方には利尻島を離れ稚内へ移動する予定であった為、予習の為にターミナルまでの道のりを確認。

 

海沿いの景色は植物の様子から北海道らしさを感じることができ、所々でノビタキやノゴマが囀る様子も。

 

しかし依然として雨は強く降り続け、カメラを構えることに躊躇を覚えます。

 

宿泊先を離れ1時間半ほど経った頃でしょうか、この頃から小雨になる時間帯がありやっとの思いでバードウォッチングを開始。

 

 

前日観察したノゴマは藪から出てくることはありませんでしたが、この日観察できた個体は一様に目立った場所で囀っており撮影も容易でした。

 

こちらは「青い海を背景に」と言いたいところですが、太陽光線の無い状態で海は青く写りません。

 

 

青い背景の正体は民家の屋根。

 

天売島で観察した時と同様に利尻島でも民家周辺でノゴマが当たり前のように見られました。

 

賑やかに囀る様子は動画でも撮影。

※望遠レンズを手持ちで掲げながら撮影したため映像がグラグラと揺れます。

 

 

海沿いは特にノゴマが観察し易く、様々な個体を見て回っていると突然目の前のオオイタドリにエゾアカゲラが飛来。

 

 

珍しい場面に急いでカメラを構えましたが残念ながら葉っぱの陰となり姿がはっきりと見えません。

 

角度を変えて撮影しようと思ったところ私を警戒したのかエゾアカゲラは飛び立ってしまい観察を諦めた瞬間...

 

何を思ったのかエゾアカゲラは電柱へ。

 

 

キツツキならぬコンクリートツツキ。

 

こちらの個体、場所を移動しても別の電柱へ止まり慣れた様子で穴へ嘴を挿し込んでいました。

 

 

面白い習性を持った個体がいたものです。

 

また付近では電線に止まり囀るウグイスの姿も。

 

 

本州で見られる種であっても地域性による行動の違いを見ることができるのは旅の楽しみの一つといったところでしょうか。

 

 

海岸線を走ると笹が広く繁る場所もあり、少し立ち止まって周辺に耳を傾けてみたところシマセンニュウの囀りを聞くことができました。

 

潜行性の鳥であることから姿は見えませんが囀りは四方八方から聞こえ、気配を探ると笹の葉が揺れることで何処に潜んでいるのか手に取るように分かります。

 

時に開けた場所へ出てくることもありますが、地面を素早く移動する様子はまるでネズミ。

 

暫くその場でじっとしていると目の前へ顔を出す場面があり、ほんの一瞬でしたが撮影の機会に恵まれました。

 

 

地元では渡りの時期にしか見ることができない種とあって、北海道では普通種であってもこの様に観察できるのは嬉しいものです。

 

再び雨の強まる時間があり海岸線を進みながら周囲の様子を見て回るとウミネコの大群に遭遇。

 

数万羽という数に驚きを感じ、主要道路から小路へ入ってみるとコロニーを発見。

 

 

土が露出した場所には数多くの雛が見られ、いずれの個体も全身が灰色を帯びておりまるで毛玉のよう。

 

こちらは拡大画像。

 

 

ここまでの数となると他の鳥類への脅威は勿論のこと、様々な問題があるかもしれません。

 

ウミネコのコロニーから少し進んだ場所で【南浜湿原】という看板を目にしました。

 

 

駐車スペースは3台ほどしかありませんでしたが、こちらへ車を停めたところ小鳥の囀りが賑やかであったことから小雨になるまで暫し待機してみることに。

 

20分ほど待ちましたが一向に空模様は変わらず「辛抱ならん」と入り口周辺に立ってみたところ比較的近い場所でコヨシキリを見ることができました。

 

 

コヨシキリが囀る傍らシマセンニュウも囀っており、こちらの個体はじっくりと観察でき思いがけない収穫です。

 

 

悪天候ながらも海岸線では北海道ならではの観察を楽しめましたが、島を一周し起点とする場所へ戻ってきたのは13時。

 

利尻島を離れるフェリーは17時40分に出港であったことから残された時間は4時間ほどしかありません。

 

それまでにクマゲラに出会うことはできるのか...

 

 

ようやく雨雲が流れ利尻山にかかっていた霧も無くなりつつあり、タイミングを見計らって林道での探鳥を開始。

 

しかしそう簡単に出会えるはずもなく時間だけが過ぎていくばかり。

いよいよもって諦める他ありませんでした。

 

 

やはり初めて訪れる場所でお目当ての鳥に出会うのは難しいものです。

そもそも簡単にクマゲラを観察し稚内へ移動するという計画は根本的に問題があったのかもしれません。

 

余裕を持ってフェリーターミナルへ移動を始めたところ...

 

 

「ん...?...%&*§〒¢£」

 

 

なんと巣穴から顔を出すクマゲラに遭遇。

私はこの時、言葉にならない言葉を発していたはず。

 

土壇場で鳥神様が降臨。

 

顔を覗かせていたクマゲラは一度顔を引っ込めると再び顔を出したりと意味不明な行動を繰り返していました。

 

何か周辺の様子を伺うような仕草にも思えます。

 

 

その様子を観察していると突然現れたのが別の個体。

 

頭頂の特徴から雄ということは分かりますが巣穴から顔を覗かせていたのも雄の個体です。

 

 

特徴を確認すると巣穴から顔を覗かせていた個体よりも頭頂の赤みが濃いことが見て取れ、初めに見た個体は「巣立ち前の幼鳥なのでは?」という疑念が生じました。

 

後から飛来した個体は親鳥であると疑い画像を確認してみると特に餌を持っているようには見えず給餌の為に飛来したのではないことが判明。

 

 

巣穴に何度か顔を突っ込むと親鳥と思える個体は飛去。

間もなくしてドラミングの音が...

 

静かな森のなかに響くクマゲラのドラミングは神々しくも感じ、その音に浸っていると再び親鳥が飛来。

 

よく見てみると雌であることが判明し、巣穴から顔を覗かせていたのは巣立ち前の幼鳥と判断して間違いなさそうです。

 

 

雌の個体も雄と同様の行動を見せると間もなく飛去。

静かな森に再びドラミングの音が響きました。

 

巣穴から幼鳥が顔を覗かせると今にも巣立ちそうな雰囲気...

 

 

もしかすると親鳥は巣立ちを促していたのかもしれません。

 

 

しかし残念ながらここでタイムアップ。

賞味20分ほどの観察でしたが、巣立ちという大事な場面であっただけにいずれにせよ長居することはできません。

 

本来カメラを向けること自体禁忌といった場面ですから、早い段階での発見であっても僅かな観察が限界だったことでしょう。

 

 

短い時間でしたが無事に目的を達成することができ、気分が高揚したまま利尻島を離れることができました。

 

 

出港する頃には青空も見えるようになり稚内までの航路では海鳥観察を楽しみましたが、そちらの様子は後日更新の日記へ続きます。